第5話 警察官の制服の威力
吉田さんはこの交番へ来て五年と聞いている。しかしこれだけ移動なしで同じ交番に勤務する理由は知らないが異例だ。それ以前は何処で勤務していたか知らないし、吉田さんは話そうとしない。
署内でも吉田さんの過去を禁句のように誰も口にしない。五年以前は謎に包まれている。
別に俺は人情おまわりさんになろうとは思っていないが、いずれは刑事になりたいと思っている。俺は警察官になってまだ五年目だ。キャリアなら国家公務員Ⅰ種試験の合格者は将来の幹部候補生となり、いきなり警部補が約束されている。
同じ警部補でも、こちらは国家公務員でノンキャリア組は殆どが地方公務員であり格が違う。聞くまでもなく大卒ではあるが俺はノンキャリア、そんな高望みはしないが、せめて退職までに警部にでもなれれば御の字だと思っている。
一年前にやっと巡査から巡査部長になったばかりだが、警察法には規定されていない階級的呼称が巡査長でありその下に巡査がある。それでも推薦があれば刑事になれない事はない。
今はその下準備というか警察官として実績を重ね大先輩にみっちり教わり警察官として職務を果たしながら夢をめざしつもりだ。若い俺にはやはり自分の手で事件を解決して見たい夢はある。今まで最高の手柄は車上荒らしを現行犯逮捕したのが一番の捕り物だった。
拳銃、警棒、手錠を携帯しているとはいえ相手は善人じゃないし逮捕する時には緊張した。刃物を持っているかも知れないし情けないが心臓がバクバクだった。
犯人は警察官の俺を見て怯んだのか、さほど抵抗もなく逮捕出来たのは幸運だったかもしれない。改めて警察官の制服の威力には驚かされた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます