第3話 定年間近の先輩

警察官だからと言ってそうそうドラマのように事件に遭遇する事はない。

夜は酔っ払いが暴れているなどと通報はあるが、大抵は保護者を呼ぶか宥めて収まり事件にならない。時には空き巣とか、万引きなどあるが我々交番勤務は現場に一番先に駆けつけ交番で手に負えなければ本署に報告して橋渡しの役目で終る。

 交通事故などは交通課に引継ぐまで交通整理する程度ごくごく平和な勤務生活を日々送っている。警察官として禁句であるが事件がなければ気楽な勤務だ。


 「処で吉田さん十二月いよいよ定年退職ですね。淋しくないですか」

 「そりゃあな、四十年近くもやって来たからなぁ……しかし誰もが通る道、素直に受け止めて余生を送るよ」

 「そんな悲しいことを言わないで下さいよ。余計な事を聞いてしまいしまたね。すみません」

 「なぁにいいんだよ、来月には二人目の孫も生まれるし、また婆さんにも苦労かけたしこの再、家族サービスもしておかないとな」


 婆さんとは自分の奥さんの事らしいが照れ隠しだろう。

 孫が生まれる以前は貴方、お前。または父さん。母さんと呼ぶのが日本では一般的だが、孫が生まれると孫に合わせて爺さん、婆さんと呼ぶようになるのか? 

吉田さんも孫が出来て自分の事を爺さんと思っているのか? しかし警察官、同年代の人よりは体力もあり、まだ五年以上は現役が務まる尊敬できる大先輩である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る