第2話 探して欲しいもの
夢を見ていた。
昔、曾祖母の家ですいかを食べながら『取っておきの素敵な歌』を聞いた。
それからいつものように『コラールの昔話』を聞いて、曾祖母が優しい顔で僕を見つめているのをみた。
曾祖母の家は大きくて、昔は貿易商をしていたと聞いた。
日本家屋の横には大きな蔵があって、そこには昔の帳簿や道具が沢山しまってあったらしい。
夢の中の曾祖母は僕に優しく語りかけた。
『水色、手伝ってほしいの。』
『どうしたの?』
『楽譜をしまった場所がわからなくて。』
『楽譜?何の楽譜?』
『コラールの楽譜だよ。昔話のコラールの楽譜』
僕は目を見開いて驚いた。
僕はおとぎ話のつもりで『コラールの昔話』を聞いていたのに、本当に楽譜が存在するなんて考えもしていなかった。
『待って、コラールの楽譜は十二使徒が・・・!』
十二使徒が持って逃げたんじゃ・・・・!と言った所で僕は目を覚ました。
「あれ・・・」
気がつけばいつものベッドの上で、見慣れた天井で自分の部屋の中だとわかった。
なんだか変な寝汗を書いているような気がして、初夏のジメジメした空気が余計に変な気持ちにさせた。
***
「え?ひいおばあちゃん家の蔵の中身?」
母はきょとんとした顔で僕を見た。
「おばあちゃん家にあるかも?もう解体しちゃったからね。」
曾祖母はなんとも準備が良かったらしく、亡くなった時の采配が生前から決められていたらしい。蔵にあった本当に大切な物はしっかりと分けられていて、残して欲しいもの祖母が形見として管理し、祖母宅にあるらしい。
僕はさっそく祖母に電話をして、曾祖母の残した荷物を見ることにした。
「随分急だったね、水色」
「ひいばあちゃんが夢にでてきてさ、楽譜をしまった場所がわかんないっていってて。」
「楽譜?なんの楽譜?」
祖母は僕が夢で曾祖母に聞いた質問と同じように聞いてきた。
「コラールの楽譜。」
僕がそう言うと祖母は目を見開いて驚いていた。
それから、慌てたように祖父母宅から運び込んできた荷物を部屋に運んできた。
「なんてこと・・・!まさかお母さんの荷物にコラールがあるなんて!」
「いや、ほんとにあるかなんてわかんないよ!」
「お母さんが探してるなら、きっと必要なのかもしれないわ。」
「いや、待ってよばあちゃん、夢の話だよ!?僕が気になったから来ただけでそんな大袈裟な・・・・!」
「いいから水色、早く探すわよ!」と祖母は曾祖母の荷物を確かめていた。
よくよく話を聞くと、楽譜は蔵に置いていたはずだと言う。
その昔、楽器と一緒に楽譜も輸入されていた。
その中にコラールもあると言う。
「でもなんでひいばあちゃんは楽譜を探してるんだろう?」
僕がぽつりと呟くと、祖母は言った。
「どこかでコラールの力を必要としているんだわ。」
僕は真剣な表情でそう話す祖母を思わず笑いそうになってしまった。
まさかそんなそれこそ漫画やアニメの世界のようなことがあるのだろうか。
昔聞いたおとぎ話のような話が、実在するなんて。
ゴソゴソと行李箱を物色する祖母を手伝いながらも、僕は半信半疑だった。それなのに。
『みずいろ』
どこからか僕を呼ぶ声がした。
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