夢のような薬
雨宮 徹
夢のような薬
僕は不幸体質らしく、怪我をしない日はなかった。ある日は階段から転げ落ちたし、紙で指を切る日もあった。怪我の大小こそあれど、痛いのにはうんざりしていた。
そんなある時、親友で発明者のマイクからこんな連絡があった。「痛みを感じない夢のような薬を作った」と。僕はその薬を手に入れるべく、急いでマイクを訪ねた。
「それで、夢の新薬はどこだい?」と僕。
「この中にに入っている」
マイクは一つの試薬瓶を渡してくる。
「よし、この薬をくれ。お金は有り余っているから、言い値で買うよ」
「いやいや、親友なんだからタダでいいよ」とマイク。
なんて気前のいい奴なんだ。
「ところで、この新薬は飲み干せばいいのかい?」
「それが、注射しないと効き目がないんだ」
僕は注射が嫌いだった。一瞬だけど、痛いから。あれ、痛みを感じなくなる薬を手に入れるには、注射するという痛みを我慢しなければならない。
一瞬の痛みを無理して我慢するか、永遠に痛みを感じないか。もちろん、後者の方がはるかにいい。でも、僕はこうも考えた。一瞬であっても痛みを伴うなら、この新薬はおかしいのではないか、と。
夢のような薬 雨宮 徹 @AmemiyaTooru1993
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