【女の敵】

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。

 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。

 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。


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 午前7時半。東山署。署長室。

「盗撮?」「ああ。JR京都駅が一番多いらしい。地下鉄と違って長いやろ?」

「オッケー!!」

 言うが早いか、チエは飛び出していった。

 すれ違った副署長の船越は言った。「お嬢は、いつも元気やな。」

 午前8時半。JR京都駅。

 通勤客や観光客でごった返していた。チエは、相棒の女性警察官と双眼鏡で見ていた。

 最近は、パンツスーツの女性警察官が多いが、廃止された訳ではない。恐らくドラマ等の影響だろう。チエは、いつもスカートだし、相棒はパンツスーツだ。

「警視。発見しました。2番目のエレベーターのスーツの男が挙動不審で、前の女性のスーツケースの陰から、自分の鞄を前に出しています。」

「よし。B班に連絡。」そう言って、チエはエレベーターに近づき、スーツケースの女がエレベーターを上り切ると、右腕を差し出し、ラリアートを男にお見舞いした。

「な、何をする?」と男が言うので、周囲を見回し、女性が多いのを確認してから、チエは「盗撮は、おんなの敵や。そやな?みんな。」と大きな声で言った。

 女性達は、頷くことで同意した。

 チエは、男に往復ビンタをし、股間を踏んだ。

 応援の男性警察官達が来た。

「抵抗するので、止むなく倒した。迷惑防止条例違反に足して、公務執行妨害や。ひったてい!」と言った。

 男性警察官達が逮捕連行するのを確認したチエは、相棒の楠田幸子に報告を受けた。

「警視。烏丸御池の長愛銀行で強盗です。」「よっしゃ、いくで。」

 チエが走り出したので、慌てて楠田はついていった。

 午前9時半。烏丸御池。長愛銀行烏丸御池支店。

 チエは、正面玄関から入って行った。

 犯人は1人。拳銃を持っているが、組み付いている行員はいない。行員達は、言われるがまま、金の用意をしていたところだった。

「誰や、お前は?」と拳銃を向けた犯人が言った。

 チエは、返事をする代わりにスライディングして、男の脚の間に滑り込み、股間をグーパンチした。

「な、なんじゃ、こりゃあ!」と言って、男は前のめりに倒れた。

 チエは、男を立たせて、肩を脱臼させた。

 午前10時半。東山署。取り調べ室。外。

 中で悲鳴が聞こえる。

 船越が入って行く。

 東山署。取り調べ室。中。

 船越が、「お嬢。お座敷や。西陣の宝石店で盗難事件発生。」と、言った。

 チエが出て行くと、船越は、優しく被疑者に「さ。良い刑事悪い刑事普通の刑事。どれにする?」と尋ねた。

 銀行強盗男は、「あの人以外」と、素直に答えた。

「せやな、皆そう言うネン。」

 午前11時。パトカーの中。

「なあ、楠田。京都には、警察官何人おるねん。何で私だけ・・・。」

「警視が有能なだけ。皆見習いみたいなもんですわ。」

「そ、そうか・・・。」

 楠田は思った。署長は正しい、と。何しろ、神代チエだけが、検挙率100%、完落ち率100%なのだ。『褒めれば伸びる子』なのだ。

 ―完―


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