第10話  コウは賞金稼ぎになる!

 少し離れたところに街がある。コウはそこへ行ってみた。流石、街! 村とは違う。歓楽街もあった。コウは、真っ先に売春宿に入った。入ってみると、村よりも、街の女性の方が何かと洗練されていた。コウは、しばらく売春宿に連泊した。そして、売春宿にいた女性全員と遊んだ。


 コウは、この街に来た目的も忘れ、毎日を歓楽街で過ごした。一通り、ほぼ全員の娼婦と遊んでみて、特に気に入ったのはメグ、ラン、カレンの3人だった。当然、その3人に絞って会いに行くようになった。


「僕、ハーレムをつくるねん」

「すごく大きな夢ね」

「ハーレムを作ったらメグも呼ぶから、来てや」

「行く! 行く! 絶対に約束よ! コウちゃんとだけ愛し合いたい。その日を楽しみにしてるからね」

「荒稼ぎして、スグにハーレムをつくるから」

「どうやって荒稼ぎをするの?」

「あ! 毎日が楽しすぎて忘れてた。僕、賞金稼ぎをするねん」

「危なくない?」

「大丈夫、僕は強いねん。賞金首って、この街にいるんかな?」

「何人もいるよ。保安官のところに行けば、情報は幾らでも手に入るし」

「保安官がいるの? なんで保安官は逮捕せえへんの?」

「何年か前、保安官が賞金首の男と戦って重症を負ったのよ、それから、保安官はビビって手を出さなくなったわ」

「憲兵とか軍隊は来えへんの?」

「出動要請はしてるみたい、でも、なかなか来てくれないみたいよ」

「この街にも賞金首はおるんやな?」

「いるよ、誰も何もしないけど」

「ほな、保安官のところへ行って来るわ」

「危ないことはやめておいた方がいいと思うけど」

「僕は大丈夫や」



「保安官さーん!」

「なんだ、君は?」

「賞金稼ぎです」

「その若さで?」

「13歳や。もう成人してるで」

「何の用かね」

「賞金首の資料をください」

「やめておいた方がいいよ」

「ええから、早く資料をくださいよ」

「ちょっと待ちたまえ……ほら、これでいいか?」

「ありがとうございます。この中で、この街にいる賞金首を教えてください」

「こいつと、こいつと、こいつと……」

「わかりました。こいつらはどこに?」

「酒場とか、歓楽街とか」

「わかりました。ほな、行ってきます」


「酒場ねぇ、とりあえず一軒一軒まわるか」


 最初の1軒目。……いた。


「すみません、賞金首のマイケルさんですか?」


 カウンターに座っていた、赤ら顔の大男が振り向いた。


「なんだ、お前は? 俺に何のようだ?」

「あ、やっぱりマイケルさんや。ほな、僕に捕まってください。僕、賞金稼ぎなんで」

「ガキが何を言ってやがる、痛い目にあいたくなければ、とっとと失せろ」

「ほな、あんたを殺しますわ。“生死を問わず”って、資料に書いてるんで」


 マイケルが剣を抜いた。コウも剣を抜いた。


「どこからでもかかって来い!」

「そちらからかかって来てええよ。あんたがいくらかかって来ても僕は大丈夫やから」

「生意気な野郎だ。腕の1本でもいただくか」

「剣を抜いた以上、僕はあんたを許さへんで。ひどい罪状やな。強盗、殺人、強姦……。うん、あんたは死んだ方がええな」

「だったら、殺してみろよ!」


 マイケルが剣を振り上げた。その剣が振り下ろされることはなかった。一瞬で、マイケルの首は斬り落とされていた。


 昼間で良かった。マイケル意外に客はいなかった。客がいたら、大騒動になっていただろう。コウは、マイケルの髪を掴んだ。生首をぶらさげて保安官の元へ。


 生首をぶらさげて来たコウを見た保安官の腰が抜けた。


「はい。賞金ちょうだい」

「賞金が届くには数日かかるんだ、待っていてくれ」

「なんや、スグにもらわれへんのか。ほな、次の賞金首を探しますわ」


 コウは、歓楽街に戻った。


「メグー!」

「あら、コウちゃん、また来たの?」

「賞金首、1人ゲットしたで」

「早っ!もう、1人捕まえたの? 誰を捕まえたの?」

「マイケルってオッサン。捕まえたっていうか、斬り殺した」

「嘘!? マイケルを殺ったの? 保安官に重症を負わせたのはマイケルよ」

「そうやったんや、斬りかかってきたから首をはねたんやけど」

「コウって、強かったのね。っていうか、その歳で人を斬って平気なのにもビックリだけど」

「ああ、僕、2回戦場に出てるから実戦経験があるねん。こう見えても、500人長待遇なんやで」

「マイケルにかかってた賞金はかなり多額だったでしょう? 良かったね」

「ということで、金は数日後に入ってくるし、今日は初めて賞金稼ぎに成功したお祝いや、メグを一晩貸し切るわ」

「一晩いてくれるの? コウちゃんだったら大歓迎よ」

「賞金稼ぎってええなぁ、これで一攫千金や。これを続けたら、ハーレムを作れる日も近いわ」

「ハーレム、ハーレム!」

「嫁さんにも贅沢させてあげられるわ」

「え! コウちゃん、奥さんがいたの?」

「あ、言ってなかったっけ? ヨーラ村にいるで、でも、自由に遊んでもええって言うてくれてるねん」

「そうなんや、いい奥さんね、浮気や遊びを黙認するなんて」

「そやなぁ、けど、今夜の僕の相手はメグやから」

「もう、コウちゃんは絶倫なんだから」

「全部、受け止めてや」

「受け止めるわよ、さあ、おいで」



 コウの、賞金稼ぎとしてのデビューだった。







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