第5話 コウ、初夜の余韻で!
茜を優しく抱き終えて、ウトウトしていると、横に茜がいないことに気付いた。というか、布団も無い。何も無い真っ白な空間だった。
“これは夢だ”
コウはもう1度寝ることにした。すると、誰かに名を呼ばれた。
「コウ、コウ……」
「誰や? 僕は寝るぞ」
「コウ、コウ……」
「なんや? 夢のくせにしつこいな」
「夢ではないのだ、コウ!」「「なんやねん? お前、誰や?」
「私は、世界を管理する者だ」
「それって、神様か?」
「好きなように呼べばいい」
「神様が僕に何の用やねん」
「一大事なのだ」
「だから、なんやねん? 一大事ってなんやねん?」
「詳しくは言えぬが、大きな災いが起きる」
「この世界でか?」
「いや、異世界じゃ」
「おやすみ」
「待て、寝るな!このピンチ、最早抗う術は無いかもしれぬ」
「抗えないんやったらしゃあないな、おやすみ」
「待て、待てというのだ」
「なんやねん?こっちは初夜の余韻に浸りたいねん」
「私の言うことを聞かぬと、茜が事故に遭うぞ」
「なんやて!?」
「嫌であろう?」
「当たり前やないか、なんでそんなにクールやねん、頭おかしいんか?」
「まあ、待て、コウが協力してくれたら、その不幸な事故から茜を守ってやることができるぞ」
「汚えー!なんやねん、その人の足元を見たような交換条件は、卑怯やぞ」
「なんとでも言え、こちらも切羽詰まっておるのじゃ」
「それで?僕はどないしたらええんや?」
「異世界に転生してもらう」
「異世界の18歳にか?」
「いや、異世界の赤ん坊からじゃ」
「それはちょっと、回りくどいんとちゃうか?」
「その村で育って、その村で人脈をつくったり、修練したり、準備も必要なのじゃ」
「で、その村はどんな所なんや? 村っていうくらいやから、王都ではないか」
「辺境の小さな村じゃ」
「そんなところから、どうやって這い上がれって言うねん?」
「大丈夫、お前が、お前らしく生きていくことが出来たならば、必ず王都からスカウトが来る。スカウトが来たら、お前の使命が始まることになる」
「俺の素行が悪いの知ってて言ってる?」
「よく、知っている」
「なら、いい。ところで、僕が異世界で死んだらどうなるの?」
「こっちの世界に戻ってくる。だが、その時は茜の事故は止めることが出来ないぞ」
「よくわからへんけど、異世界で僕がハッピーエンドを迎えて帰って来たらええんやな?」
「それしか道は無い」
「畜生、結局、拒否権は無いんかい。ほな、もう、とっとと異世界に送ってくれ」
「行ってくれるか?」
「行くしかないやろう!」
「私は、お前の力を信じているぞ……」
「勝手に信じるなー!」
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