第4話  コウの挙式、そして初夜!

 夕食後、いつもよりも言葉数の少ない2人だった。


「コウちゃんは、私と結婚するのは嫌?」

「僕のことより、姉貴の問題やろ? 姉貴にも好きな人はいるやろうから」

「好きな人は、いるよ」

「ほら、ほんなら僕なんかと結婚したらアカンやんか。僕は、姉貴を束縛するつもりは無いで。姉貴は自分の好きな人と結婚して幸せになったらええねん」


 コウは気付いた。俯いた茜が涙をこぼしている。


「なんで泣いてるん? 僕と結婚するのがそんなに嫌やった?」

「違う、違うの。嬉しいの」

「何が嬉しいねん?」

「コウちゃんと結婚できるって考えたら、嬉しくて」

「なんで? 姉貴は僕のことをどう思ってるの? 僕のこと、弟としか見てないんやろ? もしかして、男として見てくれてたんか?」

「うん。コウちゃんは私の大好きな男の子。あの日、動物園で助けてもらってから、ずっと好きだった。だから、今まで誰とも付き合わなかった」

「でも、僕、姉貴より3つも年下やけど。それでもええんか? 頼りないとか、そういう気持ちは無いんか?」

「3つ年上の私は嫌?」

「そんなことない、僕も正直に言うわ、僕もずっと姉貴のことが好きやねん。初めて会った時から、一目惚れやった。でも、一生懸命、姉弟として振る舞おうとしてただけなんや。恋人が何人もいたのは、1番好きな姉貴と付き合えなかったからや。姉貴が手に入らへんから、人数で紛らわせてたんや」

「なんだ、私達って、両想いだったんだね」

「姉貴が僕のことを好いてくれてるんやったら、もう何も問題は無い。姉貴、結婚しよう」

「うん、結婚しようね」

「恋人たちとは別れるわ。姉貴と夫婦になれるなら、他に女はいらん。女は姉貴1人で充分や」


 コウの荒んでいた人生が、色鮮やかな景色に変わった。


 コウの高校卒業を待って、茜との挙式が執り行われた。最初は和装、お色直しで洋装(ウエディングドレス)。元々茜は大美人だが、この日は更に美しさが増していた。“この世のものとは思えない!”それがコウの感想だった。


 面倒臭くて退屈な式、披露宴が終わると……。

 そう、初夜だ!


「コウちゃん、私も布団に入るよ」

「やっと、この時が来たんやなぁ。式とか披露宴とか、長かったわぁ」

「長く感じた?」

「でも、姉貴の花嫁姿を見ていられたのは幸せやったで。せやから、式でも披露宴でも、僕は姉貴しか見てへんねん」

「もう、姉貴って呼んじゃダメだよ、茜って呼んでね」

「茜……茜……茜……」

「呼びにくい?」

「ううん、茜と呼べるのが嬉しいわ」

「コウちゃん、私、初めてだから優しくしてよ」

「え?初めてなん?」

「意外だった?」

「いや、茜ならそういうこともあるやろうと思ってたんや」

「処女で良かった?」

「処女で良かった」

「まずは、キスから?」

「そう、まずはキスから」



 長いキスをしながら、コウは茜を布団に押し倒した。

 優しく、ソッと。

 それは、とてもとても幸せな時間だった。







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