第4話 緊急クエスト!死体漁り!
カタカタと生理的に受け付けない音が壁の向こうから聞こえてくる。
音の主は第3階層の出没するスケルトンだ。
普段は1階層と2階層をウロウロしている俺がなぜこんな身の丈にあわない場所で死にゲーの醍醐味を味わっているかというと、それはこの間ギルドに現れたルーキーに起因する。
俺も彼らのことはそこまで覚えていないけど、中堅冒険者の噂話を盗み聞きしていたら聞き流せない情報が入ってきた。
なんでもあのシェミ……シェイル?とかいう幼馴染らしき女の子の話だと、あの能天気な青年はダンジョンでドロップした武器を装備した途端に毒状態にかかってしまい、そこをモンスターに襲われたのだとか。
このドロップ率が鬼のダンジョンで一発でダンジョン武器を手にいれた彼は豪運の持ち主だったのかもしれない。そういえば、レアな特性でそんなのがあったっけな?
「カタカタカタ」
スケルトンの鳴き声が近くなる。
声帯もないだろうに。
ゲームの時はスケルトンが自分でカタカタ言ってるのが可愛らしかったが、現実では全然可愛くない。
凶暴なモンスターのおぞましい擬態でしかない。
こいつは筋肉も筋もないのに骨だけで動くアメリカ映画のゾンビみたいなやつだ。怯まない感じは暴走機械のほうがイメージと近いか。
「カタカタ」
壁越しに聞こえていたスケルトンの鳴き声が遠ざかりはじめる。
とにかく接敵したら余裕で撲殺されて終わりなので、こうして通り過ぎるまでやり過ごすしかない。幸いこいつの視野は存在しない眼球と同じぐらい。
つまり人間をちょっと鈍くした感じ。なので、こうして曲がり角に息を潜めていればやり過ごすことは可能だった。
「ふぅ……」
敵にあったらゲームオーバーってなんなんそれ。安定のグレスピクオリティだった。
「えー、話だとこの階層のはずなんだけどな」
お目当てのものは未だ見つからず。
能天気くんの死因はスケルトン複数体によるリンチ。
初見で3階層までいった彼はやはり勇者の末裔とかだったのかもしれない。
グレスピのバランス調整でさえなければ、彼も華々しくデビューを飾れたことだろう。
しかしここは「死んで覚えろグレートスピリッツ』。無双?なにそれ美味しいの?とばかりに理不尽の巣窟だ。あれ、俺またやっちゃいました?とはいかないのだ。
周囲を警戒しながら、やり過ごしたスケルトンと逆方向に歩き出す。そして「カタカタ」聞こえてきたら即撤退の繰り返し。
俺の目的は能天気くんが見つけてくれたダンジョン武器。
この世界はゲームと違って遺品のロストがない。なので、ほいほい俺は身の丈に合わない階層へとやってきたのだ。
俺の予想が当たっていれば「呪われた民」である俺と非常に相性の良い武器だ。
当然先に誰かに拾われてしまう可能性もあるが、噂が功を奏して避けられてることを願おう。
底辺冒険者にとって死体漁りはビックイベント。宝箱みたいなもんだ。
本当に能天気くんとあのシェなんとかちゃんには感謝だねぇ。
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