第14話 娘はカナダの大学に落ちた

いやー、びっくり。


「今回は残念ですが.....」と、メールであっさり結果が届いた。

理系の学部はともかく、文系は確実だと思っていたから、ガッカリってよりも唖然としてしまった。


日本の大学は入るのが難しくて、出るのが簡単。欧米の大学は入るのは簡単だけど、出るのは難しいってのはもう昔の話。


やっぱりこっちでも大学に入る人の人数自体が増えてるし、日本みたいにいろんなランクの大学がボコボコあるわけでもないので、なかなか難しいことになっている。しかも、外国籍の生徒からは授業料をぼったくれるので、合格者のかなりの割合がインターナショナルスチューデントに割かれているらしい。


おまけに、政府が来年から学生ビザの数を絞るって宣言したから、大学が今年のうちに穴埋めで例年以上のインターナショナルスチューデントをとるらしいとか、うそかホントかわからない噂まで出回っている、と娘から聞いてはいた。


そして噂といえば、やっぱり人種によって入りやすさが違うってのも、毎年まことしやかに言われてて、今、一番入りにくいのが白人とアジア人なんだと。そんなこと言われたら、どっちにもチェック入る娘なんて、どうなるんだ。しかし、噂とはいえ、確かに申し込みのフォームに、人種にチェック入れさせる項目があるんだよなあ。


他にも考えられる要素があるっちゃ、あるんだけど今となっては、どうしようもない。


落ちたらバスで通えるところのカレッジに入って、3年生の段階で大学へ編入する、という計画は元々あったから、それはいいんだけど、それでもやっぱり、受かるもんだと思っていた娘はショックらしく、いまだにぶつぶつ言っている。


「あー、あのカレッジ、超退屈って聞いてるし、寮にも入れないし、家からバスで通うだけなんて、つまんな〜い。映画とかで出てくる大学生の生活ができると思ってたのに〜」

と、なんか聞き捨てならないセリフも飛び出す始末。


しかしだな、私が思うに、映画に出てくる、キャッキャしてる学生の感じは、あくまでも映画の中であって、私もアメリカのカレッジ行ってたけど、カレッジでさえも勉強に追われて、ヘロヘロだった記憶しかないんだが。


日本のように大学入試の一発勝負ではなくて、高校の2年と3年の成績の平均値、何%以上が合格ラインとか、大学や学部によって決まってて、大学に行くつもりの子たちは、自分のパーセンテージを小数点以下の単位まで気にして2年間走り続ける。


娘も、テストやレポートの成績を常に足して、割って、足して、割ってってパーセンテージを気にしてやってきた。


しかも、受験の申し込みにあたっては、成績表のみならず、今までどれくらいボランティアの活動したかとか、何か学外で表彰されたか、とかの身上書みたいなのも書かされる。それに加えて、自己紹介の短いビデオ提出まであった。


だから卒業まであと2ヶ月もあるのに、カレッジはもう入学が決まっているので、

「もう、やる気がなくなったー」

と、やさぐれる気持ちもわからないではない。


そして、正直なところ最近のこっちの大学でやたらにデモしてたり、先生が生徒に変に政治的に偏った考えを押し付ける、とかも聞くので、そんなに大学にこだわらなくてもいいのかも、という気持ちも出てきている。


特に息子みたいなのは、いまだに興味があることはずっと本を読んで知識を習得したり、ネットでわけのわからない学術的な動画を一心不乱に見てたりするから、体のハンデもあることだし、いっそ、興味のある方面だけ、自力で好きなだけ追求してみるのもいいのかも、などと思ったりして。


娘は私に似て、興味の幅があっちこっちに向く人だから、カレッジに2年行ってる間に、いろいろやりたいこと、やり尽くすくらいやってみて、それから学部を考える、ってのもいいかもなあ、とかも考えたり。


まあ、受験に失敗したからといって、絶望なんかしてないし、この事を、どううまくいかせていけるかな?という方向に、親子ともども、すでに気持ちは切り替わっているので問題なしっていうのが現状。


そして、娘に、

「学費が2年分、ずっと安くなったから、浮いた分で何かしようよ!」

と言われ、一瞬その気になって、ハワイのビーチなんぞを思い浮かべたりしたけど、よく考えたら、今、無職だった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る