第13話 結婚して長い間、ラブラブでいられる関係
「ねえ、あんたって再婚とか考えてる?」
ナタリーんちの犬を散歩させながら歩いていたら、ナタリーに唐突に聞かれた。
「いや、まったく。これっぽっちも」
と即座に答えると、
「だよねー。そうだよねー。前からずっと、そう言ってたもんね?」
と、何やら鼻息荒い。
何事かと思って聞いてみたら、妹さんと何か一悶着あったらしい。
妹さんは、オーストラリアに今も住んでいるんだけど、以前は結婚してて、旦那さんとは日本旅行に行って帰ってきた直後に、別れを切りだされたらしい。
いったい日本で何があったのか?
それは、いまだに謎なんだけど、まあ、一緒に旅すると、その人と良くも悪くもベッタリだから、いろいろ巻き起こりやすいとはよく聞くもんだ。
とにかく、その人と別れて、かれこれ5、6年はたつと思う。
そして、今回ナタリーがオーストラリアに一時帰国してた時「で、誰かとまた、つきあうとかは考えてないの?」とその妹さんに何気なく聞いたところ、「考えてるよ、そりゃあ」と言われたらしい。
しょっちゅう電話で話したり、メッセージを送り合ってるけど、一切その手の話が出ないから、ナタリー的には、妹さんは、もう恋愛とか再婚は考えてないもんだ、と思ってたからびっくりしたらしい。
そこで、「ええっ? それならもっと、オープンな雰囲気醸し出したり、自分から動かなくちゃダメなんじゃん?」みたいなことをナタリーが言ったら、どうやらそれが地雷だったらしく、えらい剣幕で怒られたのだとか。
その、なんというか、「何、じゃあ、私は殻に閉じこもってるし、アピールもできてないって言いたいの?(怒)」的な?
「彼女、すぐ侮辱だ!とか、気分を害した!とか言い出すから、何にも言えやしない」
「私に再婚する気があるのか?」 と、聞いたのも、「人はこう見えて、案外、態度と裏腹に、実は恋愛したい!とか、思ってる場合も多いのかも?」と疑問に思ったかららしい。
......なんで、そんなめんどくさいこと、しなくちゃいけないのだ。
この妹さん、私も何度か会ってるんだけど、ナタリーが、日本人の私より遥かに周囲に気を使う人なので、同じ家族の出とは思えないくらい手厳しい、彼女の性格には驚かされた。
一時が万事この調子だから、女子のみ七人で、ニューオーリンズに旅行に行った時、とにかく彼女の女王様っぷりに、まわりは終始ピキピキきてた。
そんなだから、こう言っちゃなんだが、恋愛のお相手がものすごーく限られてしまうだろうな、と私も思うわけだ。
「でも、妹さん、あんな調子じゃ、相手見つけるの、相当大変だと思うんだけど」「そうなのよ、私もそう思うの。ほんと、あの性格どうにかしなきゃ、絶対むり」
たとえば私の元ボスは、記念日には必ず花束をプレゼントして、休みを合わせて旅行に行って、と、いつまでもラブラブなカップルだ。「やべ、今日、〇〇記念日だったの忘れてた! ちょっと、今から花とプレゼント買ってくる!」と、慌ててオフィスを出て行ったりしてた。
他にも、以前の上司で、長年連れ添ってる夫婦は、奥さんの誕生日は、奥さんが自分で欲しいものをを買い、誕生日当日、旦那さんにそれを渡し、その場で旦那さんが、「お誕生日おめでとう」と、それを奥さんに差し戻す、という儀式をしているらしい。もちろんお代は旦那さん持ちで。
まあ、それは、「本人に選ばせると碌でもないもの選んでくるからなのよ」と、奥さんは笑っていたけど。
どちらのカップルも、奥さんの尻に敷かれてる、みたいな感じなんだけど、そこには愛があるんだな。奥さんを大事にしてるのは見ていてわかるし、だから、なるべく奥さんにご機嫌でいてほしい、みたいな。
やっぱり奥さんが幸せなら家庭はうまくいく、ってのは本当なのかも知れない。
そして、どっちの奥さんも、めっちゃ、明るくていい人だから、まずは、妹さん本人がそういう感じにならないと、その手の旦那さんは手に入らないのではないかと思ってしまう。
……言えないけど。
〜終わり
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