第7話 介護用品が届いたのだが

息子が今年1月に受けた手術で、体重が減ってしまって、再入院を1週間ほどした。今は退院して、学校にも復活して、日中は普通に食事しているが、夜だけ、鼻からのチューブで栄養剤を補給している。


入院中に病院の管理栄養士さんが、家での栄養補給に必要な道具やら消耗品が家に直接届くよう、配送センターに先にリストを送ってくれた。


そして、入院中にデモ機で、看護師さんの監督の元、練習をさせられた。


鼻から胃までに細いチューブが入りっぱなしで、最初は息子も嫌がっていたけど、次の日には慣れた様子で、今となっては特に気になる風でもない。


そのチューブの取り替えは月に一回で、これも私にやれって言われたんだけど、

「絶望的に不器用なので、それは本当に無理です。できないです。息子、連れてくるからやってもらえませんか?」

と、泣きついた。


隣で息子も、「お願いします、お願いします。母にやらせないで下さい」って顔で、私と看護師さんとのやりとりを見守っている。


まったく信用されてない、、、。


その甲斐あって、検診のついでにチューブの取り替えはやってくれることになった。


まあ、長くても2、3ヶ月、早ければ、1月で終わる、と聞いていたので、交換のために病院に連れてくること自体、たいした問題ではない。


その代わりと言っちゃなんだが、毎夜の栄養剤の投与だけは抜かりがないようにしよう、と心に誓う。


サプライセンターに自分で連絡して、物品の配送を頼み、無事にもろもろの荷物が届いた。


とりあえず家で私が毎夜する作業は、まず、ちゃんと鼻チューブの先端が胃の中にあるか調べるために、鼻チューブにスポイトを取り付けて胃液を少し吸い上げ、リトマス紙で酸性の状態をチェックするという作業をする。


それがオーケーだと、いよいよ栄養剤の投入に移る。


基本的によく病院系のドラマで見る点滴とか入ってる透明バッグに、紙パックの栄養ドリンクみたいなのを注ぎ入れて、栄養剤バッグ→チューブ→電動ポンプ→チューブと取り付けて、それをコネクターで、息子の鼻チューブとくっつけて、スイッチオン!という仕組みだ。


そして、その「ぶらん」と、息子の鼻から出ているチューブの先っぽが抜けちゃわないように、ほっぺたにテープで固定する。そのために、固定する場所をきれいにする綿で拭き、土台となるテープ、チューブを固定するための別のテープ、チューブを固定した後、全体を覆うテープ、を順番に貼り付けるわけだが、これは、テープが剥がれちゃった時とかにやれば大丈夫、って話だった。


それでだ、届いた荷物を調べてみると、確かにリストのものは全部入ってたのだけれど、一番使うバッグやコネクタは15個だけなのに、テープ類は100枚とか、50枚とかとんでもない量が入っている。


そして月一回交換のチューブの替えが10本(10ヶ月分!)入っているかと思えば、交換時にスムーズに入れるための塗りゼリー(持ち帰り用寿司の醤油のサイズの袋)が、一個(一回分)ご丁寧にビニールバッグに入ってた。


倉庫の係の人がリスト見ながら、該当の商品を適当に放り込んだのか?としか思えない。


管理栄養士さんに、

「なんか足りなさそうなものと、有り余るものの差がひどいんですけど」

と、連絡したら、

「あらー、一年分とか送っちゃったのかしら?」

と、電話の先で爆笑してた。


ここら辺が、ほんとにカナダ。


「使い道が限られすぎて、こんなに大量に家にあっても、、、」

って泣きついたら、

「病院に持ってきたら、他に困っている患者さんとこに回せるから持ってきていいよ」

って言われたから助かった。


電話で注文した時、交換手の人が、

「ああ、リスト届いてる、届いてる。これがあるから、あなた、なんにも心配しなくていいわよ♪」

と、やけに軽やかで、一瞬不安がよぎったあの感覚はやはり間違ってなかったんだな、と思った。

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