第3話 学校一のお弁当

褒められることに縁遠い人生だったのだが、ここへきてやたら褒められることがある。


それは、子供たちに持たせている『弁当』。


よくネットでも、『日本式のお弁当』が外国の職場や学校で絶賛される、っていう動画とかが上がってるけど、彩りよく、尚且つ、食材的にもバランスのいい仕上がりになってる日本式のお弁当で、本当に素敵。


しかし、私の持たせている弁当はちょっと違う。


まあ、日本式の弁当ではあるんだけど、なんというか、手抜き感が半端ない。


例えば、焼きそば弁当なら、具が多めの焼きそばの入ったタッパーと、果物と、グラノーラバー。唐揚げ、おにぎり、ブロッコリーの茹でたのが入ったタッパーと、果物とクッキー、みたいな。


なんというか、主食+おかず+果物ってパターンで、あと、なんか物足りなさそうな時は、クッキーとかグラノーラバーとかを投入する。なんというか、欧米系のお弁当と、日本式の中間地点みたいな弁当だ。


昔、学童の先生やってた時、夏休みは一日中子供を預かってたから、ランチも子供と一緒にとっていた。もちろん、私と私の子供は同じ弁当を食べる。

夏休みも半分過ぎた頃だった。

他の子と一風変わった弁当をもって来ているのに気づいたある男の子が、ポツリと言った。

「なんかさ、kiyoと娘ちゃんと息子ちゃんって、同じ弁当みたいだね」


そりゃそうだろ。同じ家から、みんな来てるからね。


まあ、夏休み中は、さりげなく子供達がどんなランチを持って来てるのかリサーチしてたんだけど、体感で言ったら90%の子が、だいたいハム&チーズか、ピーナッツバターのサンドイッチで、残りは、冷凍ピザとか、稀にパスタ、って感じだった。


「やったー、今日は、ピーナッツバターとジャムのサンドイッチだ!」

って、ガッツポーズしてる男の子を見た時は、なんだか涙が出そうになった。


外のベンチで息子が弁当をおもむろに食べてたら、隣に座った、これまた、ザ・白人って感じの女の子が、まじまじと弁当を見て、

「私、それがなんなのか、ぜんぜんわからないんだけど、とっても美味しそうな匂いがしてる」

と言って、焼きそばだけが入ったタッパーを見つめていたのを見かけたこともある。


現地の子がそういうレベルだから、私のへなちょこ弁当でも大絶賛なわけだ。


ある時、三者面談的ななにかで学校行った時、すれ違った先生に、

「息子くん、間違いなく学校一おいしそうなお弁当もってきてる。先生たちの間でも話題になってて、もうお弁当屋さんを始めて欲しいよねえ、って話してる」

と、言われたこともある。


そっかー、弁当屋かー。


と考えてみるが、続かなそうだから、即却下。


娘の方はといえば、中東系の友達もいたりするから、みんなどんなお弁当持ってきてるのか興味本位で聞いてみたら、やっぱりその国の傾向をもろに表しているらしい。でも、毎日献立が変わるのは稀で、なんか、いろんなものをタッパーに詰めて持ってきてるけど、持ってくるものは同じ、みたいな。


あと、「ラマダンだから、なになにちゃんは今はランチ食べない」とかもあったりして。


そして学校にカフェもあるんだけど、けっこうな値段するし、メニューもいわゆる欧米系だし、そこそこ並ぶし、で、そんなに惹かれるものでもないらしいけど、一度くらいは、試してみたい、と以前から子供に頼まれていた。


そして、私の仕事の関係で、その日がやってきて、

「え、なに、今日スクールカフェで食べてもいいの?」

と目を輝かせて、二人は登校していった。


そして帰宅したこどもたちは、

「スクールカフェ行ったんだけどさ、味がスパイシーすぎて、あんまり食べられなかった〜」

と言って、ブチギレていた。


そういや、うちの子たち、普通の塩コショウですら、「辛い、辛い」って騒ぐタイプの人間だった。これで、手作り弁当のありがたさが少しはわかったのだろうか。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る