第4話 息子、痩せすぎで再入院
今年の1月に、息子(障害児で車いす)の順番がやっと巡ってきて、ようやく手術を受けることができた。一応、先進国のひとつのはずなのに、カナダってば、ずいぶん前から医療崩壊してて、コロナ以降、さらに状況が悪化してきている。
そして、手術は無事に成功して、先週、術後2度目の検診に小児病院に赴いた。
前回の検診は、私が日本にいたために、元旦那が連れてってくれてたんだけど、なんか、今回の検診の主な理由は、手術以降、息子はめっきり体重が減ってしまったので、そのチェックらしい、とは聞いていた。
元々、痩せてる方だから、まあ、今となってはガリガリで、確かに体力なさげではあるが、一応、学校にも行ってた。そして元々、私含めて一家揃ってそもそも骨格が貧相だから、ガタイのいいこっちの子と比べると、普通にしてても、体のペラペラ感が半端ないのだ。
そして病院で無事、体重を測って、あとは問診して帰るだけだな、と思って処置室で息子と待っていたら、何やら、ドラマの『白い巨塔』みたいに、執刀医を取り囲むように4、5人の人がゾロゾロと部屋に入ってきた。
「なんだ、なんだ?」と、動揺していると、執刀医の先生が説明を始めた。
先生によると、「手術によって体重が戻らないことは、結構よくある話なんだけど、息子の場合、術後3ヶ月が経過しても、少しも元に戻っていなくて、このままだと、術後の回復に支障がきたすレベルである。なので、突然だけど、今日、このまま入院してください」と。
はい?
たぶん、私のあごは、床につくほど、落っこちていたと思う。
学校も普通に行ってるし、以前のように歩行器使って歩いたりできないから、食は細くなってはいるけど、入院って……。
まあ、それでも、それが本人のためというのなら、そうするしかない。
それに、ただいま絶賛医療崩壊中のカナダで、即、ベッドを用意してくれるというのは、かなりの深刻度であるとみて良い。結局、その後一旦、家に戻って、必要そうなものをバッグに詰め込んで、即、病院に舞い戻った。
その日のうちから、鼻から胃にチューブを通して、寝ている間に栄養物?の液体をちまちま入れることになった。
ひと段落ついて、息子に、
「しかし、突然すぎて、おかあ、びっくりしちゃったよ」
とため息まじりにつぶやいたら、
「いや、このままいけば、そうなるかも、って前回、おとうが言われてるの聞いてたよ」と。
はい?
……言って。そういうことは先に言っといて。
男どもの情報共有能力の低さに、毎度、泣かされるわ。
そして、今日で、入院生活6日目。
入院施設は、基本的に全部個室。
簡易ベッドになるソファや、トイレ、バスがついていて、リクライニングして足も伸ばせる椅子も置いてある。シーツも毛布も、タオルも付き添いの人の分まで全部貸してくれるし、共有キッチンには、飲み物とシリアルとか、食パンとかも置いてくれているから、わりと快適。ただし、いろんな人がやってくる。
執刀医と、研修医、補助医師、何科なのかすらわからない医師と研修医、なんか、注射してくれる看護婦さん、お世話してくれる看護師さんと、その看護師さんとペアになってやってくる新米看護師さん、病院の安全に関する担当者、管理栄養士さん、患者専用心理カウンセラー、音楽カウンセラー、学生のなんでも屋的ボランティアまで、ひっきりなし。
夜には夜で、担当の医師と看護師が挨拶に来るし、週末は、週末でまた、違う先生が担当する。
その度に、「どう? なんか、変わったことない?」って聞かれるんだけど、何せ、日中、ひたすら、息子になるべく食べさせることが目標の入院だから、そんなに目新しいことは起こらない。
そんな入院生活の中、気がついたのは、イケメンのお医者さんと看護師さん率が高いってこと。そりゃ、こっちの声のトーンもおのずと少し上がってしまうって話。しかも、看護師さんに至ってはマッチョ率も高い。私は、別にマッチョ好きではないんだけど、綺麗な上腕三頭筋とか見せつけられると、見入ってしまうのは仕方ない。
そして、この感動を誰とも分けあえないから、
「ちょっとー、今のお医者さん、超イケメンだったと思わない?」
と、息子に言ってみたら、ゴミを見るような冷めた視線を返された。
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