第63話 意外な仲間
正体を晒したセルヴィは躊躇なく斬りかかってくる。
「なんでヘスティア様の加護をもちながらカフカに手を貸すんだ?」
「……あなたになにがわかるというのでしょうか? たった数人を助け、救世主とおだてられて調子にのっているのでは?」
「剣が凍って……」
一撃二撃と剣がぶつかり合うたびにこちらの刀身が凍てついていく。彼女は水らからの右腕を魔剣に変化させているのだ。これがセルヴィの強さだ。
そして……ヘスティア様の加護なのだろう。
「そんなものですか、救世主の力とやらは? そのまま凌いでいても助けはきませんよ。所詮はヘスティアなどという邪神の力です。カフカ様の威光の前では無意味なのです」
「だったら……ヘスティア様の加護を持つみんなが迫害されていても無視をしろっていうのか!!」
「ええ、そうです。目立たぬように身を隠すか、役に立つところをみせて媚びればいいんです」
取り付く島もないとでもいうように無表情のままセルヴィは語る。
ふざけるな……だったら、巨乳であることがばれたら仕送りができなくなると辛そうだったシグレも、巨乳を救うために頑張っていたシャーロットの努力も、だれも魅了できないと無力感を抱いていたナタリアの嘆きもすべてが無駄だと……余計なことをするなとそう言ったのだ。
「多分、君もその胸でつらい思いをしてきたんだっていうことはわかる。だけど……他人の努力や苦労まで無駄だと一蹴してよいはずがないだろう!!」
「な……急に動きが!?」
俺は両足にアクセラレーションをかけて加速し、そのまま斬りつけるとともに、意識が剣にいったセルヴィの腹を蹴とばす。
「がはぁっ!!」
強化された足の一撃によって壁にまで吹き飛ばされたセルヴィだったが、即座に立ち上がる。
こいつ……背中を柔らかいものに変化させて衝撃を殺しやがったな。
「なるほど……バフがあなたの加護でしょうか? ですが、それだけの力では私を倒すことはできません。ましてや、私以外の影を倒すことは難しいでしょうね」
「まだ、影がいるっていうのか?」
俺の言葉には答えずにセルヴィはにやりと笑うと指笛をふく。不思議な音と共に何人かの気配が近づいてくるのを感じる。
「ふふ、あなたのお仲間は今頃他の影による奇襲で死んでいるでしょう。そして、あなたも同じ道をたどるのです。あの世でヘスティアとお話でもしていてください」
扉が開きとっさに剣をかまえるがそこにいたのは予想外の人物だった。
「まったく……不意打ちしかできないなんて影って本当に弱いわね。まあ、私たちが強すぎるんだけど」
「ふふ、シャーロット様も随分と腕を上げたようで……」
「な、どうやって影たちの奇襲を……」
得意げな顔をしたシャーロットと誇らしげな顔のヒルダ姉さん。そして、もう一人の影が震えながら入って来る。
「私を裏切ったというのですか、ドノバン=ギャンガー!!」
セルヴィの言葉にきまずそうに顔をそむけるギャンガーだった。
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