第64話 ドノバン
ドノバンを見たセルヴィの表情がゆがみまるでゴミを見るような目でにらみつける。
「全く有利な方にすぐに突くあなたの性根は本当に終わってますね。私の力を借りて大事な後継者争いにて、功績を偽ったことは変えられないのですよ。そのことがバレればあなたは追放されるのです。わかって……」
「うるせえ、そんなことはわかってるんだよ!! それでも俺はギャンガー家の人間なんだ。家がつぶされるかもしれないってのに黙っていられるか!!」
震える声だったがたしかにドノバンはセルヴィの言葉を拒絶する。そして、それでは足りないかとばかりに彼が剣をふるったことによって逃げようとした彼女の動きがにぶる。
「この人数ではあなたには勝ち目はありません。降伏していただけますか?」
「ちっ」
そして、その隙を逃すようなヒルダ姉さんではなく、その剣はセルヴィの首に突きつけられている。
「体を金属にすれば魔法を放ちます。表面は変化で来ても内臓などは変えられないですよね。衝撃には耐えられないでしょう?」
淡々としたヒルダ姉さんの言葉に表情を引きつらせるセルヴィ。状況がろくにわからないままドノバン兄さんに視線をおくると気まずそうに逸らされた。
「ドノバンが影たちが潜んでいる場所を教えてくれたの。そのおかげですぐにこっちにこれたのよ。助かったわ」
「そうなのか……でも、二人はグルだったんじゃないのか?」
「俺がこいつの力を借りたのはギャンガー家の後継者になるためだ。俺は……俺ならギャンガー家をより強く、より発展させれる……そう思っていたんだよ。だけど、ギャンガー家を取りつぶすつもりのこいつらとは手を組めるかよ!!」
自分にいいきかせるように強い言葉を吐くドノバンを見て思う。そういえば彼は俺にはクソみたいな態度だったけど、部下たちには慕われていたし、訓練だってしていた……
こいつはこいつなりに考えていたのかもしれない。それよりもだ……
「ドノバンを見直した……とかないよね?」
「は? あなたは私をばかにしているの? 普段クズがたまたま良いことをしても、一回良いことをしたクズよ、私を救ってくれた救世主とは比べ物にならないわね」
シャーロットがドノバンをほめるものだからちょっと気になってしまったのだがすごい勢いで彼女に睨まれた。
「まったくしょうがない婚約者様ね……ん」
「うわぁ……」
いきなりひきよせられると、そのままシャーロットにディープキスをされる。驚いて暴れるもすさまじい力で彼女の気持ちをわからされる。
「これで私の気持ちがわかったかしら?」
「ああ、変なことを言ってごめん」
「……」
「なんで俺は罵倒された上に、好きだった女がキスしているところを見せられているんだよ……」
「さあ、これまでの自業自得ではないでしょうか?」
黙って睨むことしかできないセルヴィの首に剣を突きつけたままのヒルダ姉さんに冷たくあしらわれるドノバン。
とりあえずはパーティーが始めるまでに襲撃を防げた……と誰もが気を緩めた時だった。
「あらあら、せっかく可愛い妹の様子を見に来たのに出迎えもないなんてどういうことかしら?」
扉が開くと一人のドレスを身にまとって女性が入って来る。金色の髪に美しい顔立ちはどこかシャーロットをほうふつとさせるがその目つきは穏やかで……どこか優しそうな雰囲気をもっているのだが……
シャーロットだけでなくセルヴィやヒルダ姉さんまでも息を飲むのがわかった。まさか、彼女が……
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