第57話 ナタリアの誘惑

「こたびの遠征ご苦労だった。サキュバスと同盟を組み、オークやゴブリンも倒したこれでしばらくは我が領も安泰だな」



 屋敷に戻って事の顛末を報告すると父が満足そうに頷く。まあ、実際はカフカと完全に敵対したから全然安泰ではないんだけどね。



「その件で話があります」

「ん? 後継者問題か? それならば今回の功績もあるし、ドノバンもお前こそがふさわしいと認めていたからな。問題なく進むから安心するがいい。反対するものがいれば私が黙らせてやるわ」


 魔物たちの脅威がなくなったのがよほどうれしいのか豪快に笑う父。だけど、それじゃあないんだよね。



「我が婚約者のシャーロットが心配しているのですが、私が辺境伯となることで、第一王女のカフカ様がこちらを警戒するのではないかと助言をもらいまして……」

「カフカ様がか……? あの人は心優しき才女だと王都でも有名だが……まあ、家族が言うのだ。なにかあるのだろうな。仲の良い貴族に探らせておく」

「ありがとうございます!!」



 意外にも納得する父を見て、ほっと一息つく。

 まあ、これも魔物たちを倒して成果を上げたからなのだろう。現金な話だとは思うが、こうやって実績を積み重ねていけば人の目は変わる。

 きっと巨乳への嫌悪感だってへらせるはずなのだとちょっと嬉しくなる。



「それよりも……今はお前がやることがあるはずだ」

「やること……ですか?」

「ああ、サキュバスの女王がお前に用があるそうだ。次期辺境伯としてちゃんとおもてなしをしろよ、あと……英雄は色を好むというが限度があるからな」

「はぁ……」


 にやりと笑う父に嫌な予感しかしないのだった。



 そして、父の部屋をあとにした俺はナタリアさんがいる客室のドアをノックすると入室の許可が下りたので扉をひらく。



「待ってましたぁ……救世主様のおかげで私たちを悩ませていたゴブリンやオークが倒されて嬉しいですぅ」



 ベッドの上に腰掛けているドレス姿のナタリアさんが満面の笑みで出迎えてくれる。



「ああ、こっちもサキュバスたちと同盟が組めたおかげでゴブリンや黒幕の正体もつきとめてた。助かったよ。ありがとう」

「ふふふ、お互いウィンウィンってやつですぅ。それに定期的に男の人たちも私たちの里に遊びに来てくれるし、こっちとしても大助かりですぅ」

「ああ、こっちとしても合法的に発散できれば犯罪率も増えるからね。それにサキュバスの里で食堂とかの経営とかも許可してくれてありがとう」



 そう、戦いが終わった俺たちはサキュバスの里をちょっとした風俗街にしようと話し合ったのだ。

 サキュバスたちは定期的にえさを入手できるし、うちとしても犯罪者は減るうえに、色々なお店を出すことができるので税収も増えていく。一石二鳥なのである。

 まあ、多分貧乳ばかりだから俺は楽しめないし、そんなこところにいったのがシャーロットにばれたらやばいからいかないけど……

 そんなことを思っていると咳払いと共にナタリアさんが真剣な瞳でこちらを見つめているのに気づく。



「救世主様……あなたにはほんとうに感謝しています。あのままではサキュバスたちは二つの派閥分かれ弱体化し、破滅の道を進んでいたでしょう。あなたのおかげで我々は救われたのです」

「ナタリアさん……」


 女王の顔をした彼女からはいつものむかつく感じはすっかり消えており、美しくも威厳があった。

 そのギャップに思わず生唾を飲んでしまう俺。



「ふふ、ナタリアとよんでください……そして、私に少しでもいいからお礼をさせては頂けないでしょうか?」


 立ち上がったナタリアさん……いや、ナタリアはこちらに歩きながら徐々にドレスを脱いでいく。

 その姿は何とも蠱惑的で……



「まった。俺には婚約者が……」

「大丈夫です。今回はシャーロットさんには許可済みですよ」


 ドレスがはだけるとともに巨大な胸がその存在を主張するかの如く、ぼろんと飛び出てくる。

 しかも、なぜか下着が湿っているようだ。


「これは……」

「その……サキュバスは興奮すると魔力が液体となって胸からあふれてしまうんですよ……」

「な……」


 そんな母乳(母乳ではない)プレイだと……? 恥ずかしそうに顔を真っ赤にしているナタリアの胸をがんみしていたのに気づかれたからか、彼女はクスリと笑う。



「よかったら吸ってみますか?」

「え……? ああ、遠慮なく」



 そうして、俺が彼女の胸元に口をつけると……




 世界が暗転して真っ白い……



「くそがぁぁぁぁぁぁ、わかってたよ、わかってたけどさぁ!!」

「あのもしかして、私、またやっちゃいました?」



 例によって召喚されて、例によって申し訳なさそうな顔をしているヘスティア様がいたのだった

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