第56話 四人目の加護を持つもの
「セルヴィが四人目の少女ってどういうことですか?」
「それは……くっ、外部からの干渉が……」
ヘスティア様の言葉に慌てて聞き返すも純白の世界がひび割れていき、ヘスティア様が冷や汗を流す。
「覚えておいてください。ヘラはすでにこの世界の常識を変えるのにすべての力を使っています。加護を持っているのは王族だけなんです。だから、彼女は……」
そこまでいいかけて真っ白い世界が砕け散ると、俺の視界は真っ暗になり、全身から痛みを感じる。
思いだせ……さっきまでの状況はどうだった?
「うおおおおおお」
「ほう、まだ生きていましたか。異教徒らしく無様に死ねばよかったのに……」
あわてて全身にアクセラレーションを使って飛び起きると、少し前までいたところには爆破の魔法が付与された矢が刺さっていた。あのまま気を失っていたら今頃火だるまだったろう。
彼女がヘスティア様の加護を持っているのか? 本当に……?
例によってスレンダーすぎる胸元をし、左手をボウガンに変化された彼女は嗜虐的な笑みを浮かべながら、ゴブリンチャンピオンの持っていた魔剣に触れると、その右腕を筋肉隆々なものへと変化させる。
「俺はヘスティア様を信じるぞぉぉぉぉ!!」
襲ってくる矢をかわしつつ俺は裸の女と戦っているシャーロットの方へと駆け出してそのまま敵に斬りかかる。
アクセラレーションによって強化された一撃だったが、相手はとっさに身を引いて、衝撃を殺しながら壁の方へと後退する。
くっそ、巨乳だったら胸が揺れるのに……貧乳だからぴくりともしない……じゃなかったぁぁぁ。
「シャーロット。俺と同時にセルヴィに状態異常回復をかけてくれ。全魔力を使う勢いで」
「え……? わかったわ!!」
一瞬怪訝な顔をするも俺の意図もわからないだろうにシャーロットが頷いてくれる。
それを嬉しく思っていると背後から情けない声がきこえてきた。
「救世主様、私はどうすればいいですかぁ?」
「ナタリアさんはそのままドノバン兄さんをおさえておいて。ヘスティア様の力を見せてやるよ!!」
さっと指示すると、俺は裸の女がこっちに来る前に全力で状態異常回復の魔法を解き放つ。
「いったい何をしようと……な……」
抵抗をかんじるもののシャーロットが魔法を重ねると、セルヴィの体が徐々に変化していく。
筋肉隆々だった右腕は元の細いものに戻り、魔剣を地面におとし、ボウガンとかしていた左腕は普通の手に戻る。
そして……その胸元は徐々に大きくなっていくのだった。
「やめろ……やめろ、私を醜い私にもどすなぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「その胸はやはり……君が四人目の……」
絶叫と共に自分の胸元を抑え込むセルヴィ。
「貴様らなどと同じにするな!! 私は……私はぁぁぁぁ」
「待って、セルヴィ!!」
先ほどまでの落ち着いた様子はどこにいったやら、胸を抑えたまま駆け出すセルヴィ。
それを追いかけようとする裸の少女だが……
「悪いわね、あんたは逃がさないわ!!」
シャーロットが横から見事のけりをぶちかましてそのまま気絶させる。そして、ナタリアさんとドノバンはというと……
「俺の負けだ……もう、戦うつもりはねえよ」
「ざまぁですぅぅぅ。私だって戦えるんですぅ」
剣を地面に置いて複雑そうな顔をするドノバンと嬉しそうにぴょんぴょん跳ねては胸元を揺らすナタリアさんが対照的だった。
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