第55話 セルヴィ
「みんな警戒して」
などというまでもなく即座に戦いに備える俺たち。それを見てにやりとセルヴィはにやりと笑うといまだおろおろしているドノバンに命令する。
「何をやっているんですか? 異教徒が目の前にいるんですよ。やつらはゴブリンやオークと同じです。さっさと殺しましょう」
「な……だが……」
「わかっていないようだから教えてあげましょう。オークロードの首を私から受け取った以上あなたには拒否権はないんです。それに後継者争いにあなたが負ければヘスティアなどを信仰するものが領主になるのを私の主が認めると思いますか? ギャンガー家は終わります。あなたはもう戦うしかないんですよ」
「……わかった、やればいいんだろ、やればよぉ!!」
わずかに迷いを見せていたドノバンだったが、セルヴィの言葉によって剣を構えてこちらへと向ける。
こいつがオークロードを倒したと聞いて少しは見直したのに結局はセルヴィの力だったのか。
「なるほど。辺境伯家を取りつぶせるだけの力か……あなたはヒルダ姉さんの部下ね。セインの持っている紋章はどこかで見たと思ったのよ。これはあの人の私室にあったやつね」
「ほう……流石は名高きシャーロット様。まったくもってその胸が大きいことが残念です。それさえなければ我が主を支えてくれたでしょうに……ですが、甘すぎますね。下さらないことを言う前に我々を攻撃すべきでした」
その言葉と共にシャーロットが治療していた人間の女性が転がっていた酒瓶を片手に彼女におそいかかってくる。
「この子、まさか……」
「……私は影。あのお方のために生きるもの……」
「シャーロット!! ちぃ!!」
「させませんよ。あなたはここで私たちによって殺されるのです」
シャーロットを助けようとする俺をはばむように矢が飛んできたので剣で振り払うも、振り払った部分が凍り付いていく。
そして、ナタリアさんはというと……
「うおおお。俺だって、サキュバスくらいなら!!」
「さ、さすがに人殺しは抵抗がありますぅぅぅ」
斬りかかってくるドノバンに光弾を放つも、躊躇しているためかろくに当たらない。魔物は殺せてもこうして俺たち人間を殺すのは抵抗があるのか……
女王として荒事から逃れていたのが凶と出たようだ。このままではまずい。
「ふふふ、実に無様!! 異教徒はここで死んでください。この世界は美しいヘラ様の加護を持つ者が支配するのです」
「ざけんな、胸が大きいからって差別するやつが正しいはずないでしょ!!」
アクセラレーションで加速して矢を回避しつつ斬りかかるもナルヴィはその体を鋼と化して受け止めてきやがる。
「くそ、なんでもありじゃないか!!」
「これがヘラ様の力です。これさえあれば愚かなゴブリン相手に、姿を変えて同族と勘違いさせることもできますし、華奢な私でもあなたを吹き飛ばすこともできるんですよ」
超近距離で矢が放たれてなんとか刀身でうけとめるも、風の魔法を纏っていたのか、そのまま吹き飛ばされる。
「がはっ」
「セイン!!」
「救世主様!!」
背中からヘスティア様の石像にぶつかり激痛が走る。そして、そのまま崩れていく石像が俺に覆いかぶさって……奇跡的に石でできた胸が俺の顔にあたると……不思議な感覚に吸い込まれる。
これは……まさか……」
「大丈夫ですか、セインさん」
「ここは……ヘスティア様の世界か!! はじめて助かりましたよ!!」
こちらを心配そうに見つめているヘスティア様にほっと一息つく。いつも女の子とイチャイチャしている時に妨害されてたからね。
はじめてピンチを救われたきがする。
「あ、でも石像とはいえやはり胸に口をつけるのがトリガーなんでしょうか?」
「そんなことはどうでもいいんです!! あの子を……四人目の使徒であるセルヴィを助けては頂けないでしょうか?」
「え?」
信じられない言葉に思わず聞き返すのだった。
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