第51話 ゴブリンの巣

 遠くで戦いの音が聞こえてくる。おそらくヒルダ姉さんが相手を引き付けてくれているのだろう。

 そして、反対側ではドノバン率いる兵士たちも今頃戦っているはずだ。ようは真正面と、サキュバスの里方面とオークロードが住んでた場所の三つから同時にせめているのである。

 ゴブリンたちは数こそ多いけどそこまで知能は高くないからね……本来は……



「ゴブリンたちの戦力に関して何かしっていることはあるかな?」

「そうですねぇー。彼らには私たちやオークのように絶対的なリーダーはいません。力のあるゴブリンたちの四匹がそれぞれ暮らしているんですぅー。この混戦状況ならば各個撃破が一番だと思いますぅ」

「ふぅん、共和制をとっているってことかしら? なんだかそれを聞くと結構すごそうだけど……」

「それは違いますぅー。私たちやオークにビビッて仕方なく手を組んでるだけですぅー。だから、異種族に関しては団結しますが、普段はお互いに手助けなどはあまりしないですぅ―」

「なるほどね……」



 ということは人間とつながっているのはあのゴブリンメイジの主だけって可能性もあるのか……

 ちょっとややこしいな。


「そういえばナタリアさんはどんな力がつかえるの?」

「私が仕えるヘスティア様の力はみんなを強化する『聖戦』と光の弾を放つ『聖弾』ですぅ。本来ならば魔力を大量に使うのですが今なら救世主様のおかげでうち放題ですぅ」



 サキュバスの里でもちょっと色々としたおかげで元気にどや顔するナタリアさん。そして、彼女についていく。



「あ、ついたですぅー。部下のサキュバスが言っていた通りの場所ですぅー」



 なんでも一部のサキュバスはゴブリンの相手をするためにお金をもらって訪れているらしく何度か訪れているらしい。

 


「へぇーゴブリンなのに住んでいるのは洞窟じゃないのね」

「ここらへんはかつてはヘスティア様の神殿があったらしいですぅ―。人間たちが消えてゴブリンたちが住み着いたんですぅ」



 ナタリアさんの言葉にシャーロットと俺は複雑な顔でその建物を見つめる。かつて真っ白に輝き信者でにぎわっていたであろう大理石の建物はいまではコケなどつきゴブリンたちの住処となっているようだ。

 ヘスティア様の加護を持つものとしてはちょっと複雑な気持ちだ。



「この建物にリーダー格がまとめて住んでいるですぅ。じゃあ、事前の相談通りいくですぅ」



 リーダーはよほど警戒心が強いのか、何匹ものゴブリンたちを見張りに残しているようだ。扉だけではなく高台にもゴブリンがいるのが見える。

 ここまでは想定の範囲内である。そして、ナタリアにはとっておきの作戦があるらしい。



「ああ、わかった。シャーロット、あの紋章をもらってもいいかな? 俺に考えがある」

「ええ、任せたわ。じゃあ、頼んだわよ。ナタリア」



 ナタリアさんの神聖術によって、一気に身体能力が上がっていく。そして、胸元を隠し彼女は胸元をローブで隠しながらサキュバスの特徴である翼としっぽのついたおしりを目立つようにふりふりとしながら見張りの方へと向かう。



「ゴブゴブ??」

「遅くなってごめんなさいですぅ。今日呼ばれたサキュバスですぅ。よろしくおねがいしますぅー♡」



 無防備に歩いてきたナタリアに見張りのゴブリンが?? という顔でお互い顔を見せあって相談している間に、俺とシャーロットは気配を消して高台の見張りを襲撃する。

 身体能力が上がっている今ならば壁ののぼりだって余裕だ。まるで原神というゲームをやっている気分である。

 そして、高台にいたゴブリンが何か言う前にその心臓を貫いた。


「ゴブ……」



 手に持つ弓矢を放つ前に息絶えたゴブリンから剣を抜くと、向かいでも同様に見張りを倒したシャーロットと目が合いお互い頷きあう。


 あとはナタリアがこのまま見張りのゴブリンを引き付けていてくれれば……そう思った時にいきなり突風がふき、ローブがめくれてしまう。



「ゴブゴブ!!」

「なんでそんなひどいことをいうんですぁぁぁぁぁ」


 風で胸元があらわになったのかいきなり騒ぎ出したゴブリン二匹をナタリアさんが拳でぶったおした。

 まあ、結果オーライなのか?


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