第50話 作戦開始

「なるほど……総力戦をしかけるということですね」

「ふぅん、ゴブリンのお兄さんたちには借りがあるからたーっぷりとお礼をしないとね♡」



 サキュバスの里に戻った俺とナタリアさんはグラベルさんとなぜか一緒にいるリリスに父の言葉を伝えていた。

 内容は単純『ゴブリンの里を攻めるので手伝ってほしい』とのことだ。



「この作戦が成功すれば、人々とサキュバスの軋轢も少しはなくなると思う。だから協力してほしいんだけど……」

「ええ、我々もゴブリンには長年苦しめられてきましたかね、サキュバスの力を見せるときです。女王として戦いの許可をしましょう」

「は、わかりました!!」

「うん、いいよー♡ 私の仲間にも言っとくね♪」



 リリスがいるから女王様モードのナタリアの言葉に二人とも頷く。この前の戦いを経験してすっかりと彼女も素直になったようで何よりである。

 


「じゃあ、俺は里の外にいる仲間たちを呼んでくるよ。わかってると思うけど、これから戦うからあんまり魅了しないように言っておいてね」

「も、もちろんですよ。久々にたくさんのオスだーーーなんて思っていません」

「そ、そうだよ。ちょっとくらいならつまみ食いしちゃおうかなー♡ なんて思ってないからね♪」



 リリスだけでなくグラベルさんまで動揺しているのを見て同盟を解消したくなったのはここだけの話だ。

 なお、俺と色々とやっておなか一杯のナタリアさんは余裕そうである。



「そういえばさ、お兄さんは後継者争いのためにゴブリンを倒すんだよね? だったら私がライバルを魅了してあげよっか? そっちの方が戦いも楽じゃないかなー♪」

「なんてエグイ手を……」



 いたずらを思いついたように目をキラキラとさせるリリスの言葉に一瞬オッケーしちゃおうかと考えたが……

 もしも、このことがばれたら、サキュバスの危険性をみんなが警戒するようになってしまいそうだし……何よりもドノバンの言動に胡散臭いものを感じるんだよね……

 この件には何か作為的なものを感じるのだ。

 リリスの提案は保留にして俺は兵士たちをサキュバスの里に引き連れるのだった。





「じゃあ、ヒルダ姉さん指揮は頼んだよ」

「ええ、お任せください。派手に暴れるとしましょう。そのかわりかならず戻って来るんですよ、セイン様」


 兵士たちを引き連れてヒルダ姉さんに声をかけると少し心配そうにこちらを見つめてくる。

 背後の兵士の数人がげっそりとしているのは気のせいではないだろう。



 ゴブリンの里に攻めることになった俺たちだったが、あえて部隊を2つにわけることにした。

 メインの戦いはヒルダ姉さんに指揮してもらい、俺とシャーロット、ナタリアさんは別働隊としてサキュバスたちがゴブリンを魅了するときに使っていた裏道から潜入するのだ。

 父が指揮するbこの遠征がばれていたことから内通者を警戒してのことである。



「シャーロット、ナタリアさんいくよ」

「ええ、腕がなるわね」

「頑張るんで終わったらご褒美がほしいですぅ」



 そうして、俺たちはヒルダ姉さんが率いる兵士たちを見送って、お生い茂る木々の中にある小道をすすむのだった。

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