第48話 会議

 四人で仲良く運動♡を終えて満足した俺はゴブリンメイジが持っていた紋章をカバンから取り出してシャーロットに見せる。

 ちなみにみんなすでに服は着ており、シグレはお茶を淹れてくれていて、ナタリアさんは満足そうに笑顔で眠っている。



「この紋章は……どこかで見たことがあるわね。だけど、ごめんなさい。すぐには思いだせないわ」

「国の内情に詳しいシャーロットでもわからないのか……」

「この紋章は一体何なのですか?」

「サキュバスの里に奇襲をかけてきたゴブリンメイジがもっていたんだよ。人間と交渉して身分証代わりにと渡されたらしい」

「なるほど……まさか……」



 シャーロットが険しい顔をしてうめき声をあげると申し訳なさそうな表情で口を開く。



「もしかしたらだけど、この件は私の姉が関係しているのかもしれないわ」

「え? それってどういうことだ?」

「王家には表向きは存在しない『影』って組織があるんだけど、あなたもそれは知っているわよね。それ関係かもしれないわ」

「ああ、確かゴルゴーンを復活させた奴だよね」



 シャーロットの姉であるカフカに狂信にも近い忠誠を誓っておりシャーロットにひどいことを言っていたあの女を思いだす。

 シャーロットが彼女に対して『影』といっていたのは記憶に新しい。



「ですが、その影という組織はなんでこんなところで暗躍をしているのでしょうか?  当主様は辺境伯として立派に働いていたと思いますが……」

「セインと私の婚約を妨害するつもりでしょうね。遠征していたあなたがサキュバスの里で死んでいたら私は後ろ盾を失いカフカ姉さんの言うことを聞かざるおえなかったもの」

「なっ……」



 どれだけシャーロットの苦しめれば気が済むんだろう。未だ見ぬカフカに怒りを隠せない。

 だが、一つ疑問が頭に思い浮かんだ。



「それにしては相手が行動するのが早すぎない? 俺とシャーロットが婚約したいと父に出たのはつい最近だよ。さすがにゴブリンたちと交渉するには時間が足りないと思うんだけど」

「ええ、そうね。多分だけど本来の作戦は私があなたの元に最初に訪問した時にゴブリンたちと協力してさらおうとでも考えていたんじゃないかしら? 実はあの時は私は予定を早めていたのよ」

「あー確かに急な話だから父も帰ってこれなかったんだよね。でも、なんで予定を早めたの?」

「その……救世主様がどんな人なのか気になっていたのよ……」


 

 気まずそうに顔を逸らすシャーロット。出会った当初はツンツンだったけどやはり救世主だった俺に多少の期待はしていたようだ。

 本当にこの子はツンデレだなぁ……



「何をにやにやとしているのかしら?」

「いやぁ、本物の救世主は期待に添えたかなと思って」

「何を言ってるのよ。期待以上だったにきまっているじゃないの。あなたが私たちの救世主で本当に救われたもの」

「わ、わたしもセイン様が救世主でよかったと思っていますからね!!」



 想像以上にデレてきた!! うれしさのあまり二回戦に突入したくはなるけれど、今はそれどころではない。

 あとシグレが拗ねているが見えたので頭を撫でると幸せそうに微笑んだ。可愛い!!



「とりあえずは『影』を警戒しつつサキュバスと共同戦線を組んでゴブリンを倒すことかな。幸いにも婚約者争いはリードしているしね」



 幸せそうにねむっているナタリアさんを見つめながら思う。森の三大勢力であるサキュバスと手を組めたのは大きい。

 そういえばドノバン兄さんはまだオークと戦っているのだろうか?


 コンコン


「セイン様、そろそろ会議が始まるとのことなのでお客様と一緒にいらしてください」

「ああ、わかった。すこし準備をしたらいくよ」


 シグレに目で合図をし、ナタリアをおこして正装に着替える。『影』がどんな手を使ってくるかはわからない。

 だが、奇襲もヒルダ姉さんがいる限りは問題ないだろう。



 正装に着替えてナタリアと共に会議室へと行くと何やら騒がしいのに気づく。



「どうしたんですぅ? お祭りでもやってるですかぁ?」

「いや、会議前だし、そんなはずはないんだけど……ねえ、何があったか知ってる?」



 そこそこ仲の良いメイドを見つけたので声をかけると彼女は少し気まずそうに口を開く。



「セイン様……その……言いにくいのですがドノバン様がオークロードの首をとってきたそうです」

「え?」



 予想外の言葉に俺は思わず間の抜けた声をあげるのだった。



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