第42話 ナタリアの力
「リリス大丈夫ですか?」
悲鳴の先にいたのはゴブリンメイジと屈強なホブゴブリンたち……そして、彼らに囲まれているリリスとその仲間だった。
その後ろには怪我をおったサキュバスが倒れているのが目に入る。クソ生意気なメスガキサキュバスだと思っていたが仲間を守る気概はあるようだ。
「私の魅力に女王様とイン〇なお兄さんも魅了されちゃったのかなー♡ でも、ここは私だけで大丈夫だから、この子を運んで逃げてくれるかなぁ♪」
「オオ、ツヨガルメスガキダイコウブツ!! タップリワカラセル!!」
強がるリリスに興奮したゴブリンメイジが杖をふるうと、ホブゴブリンがせまってくるけど……
「お前らが抗えた理由はもうわかっているんだよ。神よ、浄化せよ!!」
ヘスティア様の加護を得た光がホブゴブリンを包むと、レイプ目だったホブゴブリンの瞳に生気が戻る。そう……こいつらは魅了がきかないわけじゃない。ほかの魔物の魔法によって、洗脳されているだけなのだ。
そして、いきなり正気にもどって混乱している隙をのがすまいと、ナタリアが前に出ると、谷間を寄せてポーズを取ると……
「ゴブゥ……」
「ムネガデカクテキッショ……」
ホブゴブリンとゴブリンメイジのテンションがくっそ下がっていくのがわかる。あ、やっぱり精力あっても爆乳だと魅了はできないんだ……
爆乳の谷間とか最高じゃないか、この下等なゴブリンが!!
一瞬悲しそうな顔をしたナタリアだったが、俺の足をふたたび尻尾で握るとそのまま詠唱に入る。
「我らがヘスティア様の加護の元に……聖戦よ、我らが仲間に力を分け与えん!!」
その一言共に全身から力がみなぎって来るのがわかる。おそらくこれがナタリアさんのヘスティア様の加護なのだろう。
ただハイサキュバスとしての魔力は圧倒的でありそのバフもすさまじいのがわかる。現に身体能力で劣ってさきほどまで劣勢だったサキュバスたちが盛り返している。
「すごぉい……これが女王様の力なの♡」
リリスはホブゴブリンをけとばしながら、傷ついたサキュバスを避難させると尊敬の念の籠った目でナタリアを見つめはじめた。
そして、それに気づいたナタリアさんがどや顔で言った。
「ふふ、私が女王たる所以が分かってくれて何よりです」
「まあ、魅了はきかなかったけどね……」
「ううーーーー、救世主様ひどいですぅぅぅ!! でも、その辛辣なところが癖になってきましたぁぁぁ!!」
思わずつっこみをいれるとこっちを振り向いて半泣きで叫んでくる。だけど、笑顔をうかべているのはなんでだろうか?
……と、そんなあほなことをやっている場合ではない。
「ナタリアさん、他のサキュバスたちのことは頼めるかな? 俺はリーダーを狩りにいく」
「任せてくださいですぅー魔力がマックスな私に不可能はありませんよぉ!!」
「……グラベルさん。サキュバスたちのことをお願いします」
「はい、おまかせください」
「なんでそっちに頼むんですかぁぁぁぁぁ!!
得意げな笑顔に一抹の不安を覚えたので、遠くにいるグラベルさんにこえをかけると頼もしい返答が帰ってきたので安心して走る。
ナタリアによるバフとアクセラレーションが相乗効果となっており、かつてないほど体が軽い。
もしかしたら物語の英雄もこんなかんじだったのかな?
そんなことを思いながらすれ違いざまに負傷しているサキュバスたちを治療して進むとようやく目標の背中が見えてきた。
「散々暴れてどこに行くつもりかな?」
「ナンデコンナトコロニニンゲンガ……ソウカミリョウサレテイルノダナ……ナラバチリョウシテヤロウ」
ゴブリンのリーダー格らしきゴブリンメイジは俺に優しく微笑むと杖をふるう。そのようすに眉をひそめていると、ナタリアさんの力で強化された耳に風切り音が聞こえ、振り向くと矢がこちらに向かってくるのが分かった。
ナタリアさんは本当は強いんですよ……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます