46話 エクウス不在の伯爵邸
エクウスはリリアージュに伯爵家を仕事で長期間離れることを説明していた。
彼女が嫁いできてから1ヶ月も離れるのは初めてだった。
伯爵家の主要な使用人たちも替わり若干の心配もあったが、彼らにはリリアージュを貴ぶように命じていた。
エクウスはリリアージュと使用人たちに見送られシエルバ伯爵家から旅立って行った。
リリアージュはエクウスから離れることに寂しさを感じながらも、彼が無事に帰還することと、仕事の成功を毎日願いながら日々の生活を送っていた。
エクウスが旅立った後リリアージュの侍女たちがよそよそしい態度に変わっていった。不敬にはあたらないし、雑に扱われているわけでもないが遠巻きにされているような態度だった。
リリアージュは侍女たちの態度に気づいていたが、仕事に不馴れで自分にまで手が回らないのかと気を遣い、自分で出来ることは自らするようになっていった。
元々実家でも朝の支度や湯浴みなど人の手を借りなくてもいいように躾られていた。外出が少ないし普段はシエルバ伯爵家でもひとりで着替えられる簡素なワンピースで過ごしている。
エクウスが旅立った後リリアージュは、庭に面した自室で過ごしていた。
起床後すぐに簡素なワンピースに着替え、タオルを持ち庭に出て朝日を浴びる。育てている植物を見て回り、庭にある手洗い用のシンクで顔を洗い、食堂に行って朝食をとった後、料理人の下働きをするジョンの所へ寄ってアビーの食事をもらい自室に戻る。
エクウスと一緒にとっていた朝食とは違い、給仕する者も不在でスープの具も少なく朝食は冷えていた。
リリアージュはパンを一つ持ち自室に戻りアビーと一緒に食べることにした。
以前はリリアージュが朝食を取っている間にランドリーメイドがシーツの交換と洗濯物を持って行ってくれていたが、3日程前からランドリーメイドが来なくなった。仕方がないのでランドリーメイドの所に行くと、
「申し訳ありません。こちらの籠に洗濯物を入れていただき、お部屋の前に置いてくださいませ」
と言われ、深々と頭を下げられた。
「わかったわ。新しいシーツの交換は自分で出来るので着替えと一緒に部屋に置いておいてね」
リリアージュは青い顔をして頭を下げるランドリーメイドの元を後にして執務室に向かった。
「トニーちょっといいかしら。使用人たちの人手は足りているのかしら?シフトはどうなっているの?」
「シフトに関しては問題はありません。仕事に不馴れなだけだと思います。もう少しお時間を下さい」
「お願いね」
リリアージュの問いかけに新執事長のトニーはシフト表を見ながら事務的に答えていた。
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