44話 学友たちとの交流会①

 翌朝はシエルバ伯爵夫妻でヴォルガを見送った。

 エクウスはヴォルガと実のある話が出来たと上機嫌だった。ヴォルガもシエルバ伯爵家の予想以上のもてなしに心から感謝していた。


 月日は過ぎ執事長のバンスは予定通り来週退職することになった。バンスが気がかりなのは次期執事長のトニーのことだった。

 エクウスにも進言していたが、数字や書類作成などは完璧ではあるが、思い込みで仕事を進めてしまうことや、他人の感情を汲み取れず、効率を重視するトニーの仕事に不安を感じていた。


 バンスは新任の侍女長出あるローザのことも気にかかっていた。仕事の面では問題はないがエクウス様とリリアージュ様への態度の差が目につく。

 バンスから見たローザはリリアージュ様に仕えることに不満を持っているようだった。

 対してエクウス様には媚びるような態度だ。


 バンスはトニーにローザの事を言っても理解できないと思った。仕事が捗っているのなら問題はないとするだろう。

 バンスは悩ましい問題に頭を抱えていたが、エクウスに委ねることにして、シエルバ伯爵家を去っていくことにした。

 バンスは『エクウス様には進言しておいた』と自分に言い聞かせていた。


 執事長、侍女長、料理長が替わりシエルバ伯爵邸の雰囲気が変わっていった。



 ー数ヶ月後ー


 エクウスは本日の商談の後、シエルバ伯爵家の別邸に旧友たちを招き、十数年振りに会う約束をしていた。学園の旧友たちと夜通しで酒やカード等の娯楽を楽しむためだった。きっかけは偶然街で会った旧友のひとりからの軽い提案であった。


 エクウスは最近、市場の視察のためシエルバ伯爵領以外に出かけることが増えていた。流行や庶民の生活から新しい事業の展開や仕事の役に立つ情報を自らの目で確かめたかった。予想以上に養鶏業が成功し、エクウスは益々仕事にのめり込んでいった。


「エクウス様、本日はお招きいただきありがとうございます。お仕事の話など聞かせて下さい」

「ようこそ、わが邸に。部屋も用意してある。ゆっくりと過ごしてくれ」

 学友たちは泊まりがけで飲み食いし、騒いでも差し支えない伯爵家別邸での集まりを楽しみにしていた。


 どこで聞いたのか、誰の紹介なのかはわからないが、中にはほとんど交流のなかった者まで現れ、妻と称した愛人を連れ込む者までいたが、エクウスは気付かない振りをして出迎えていた。一夜限りのお祭りのようなものだと考え、伯爵家の事業の宣伝だと認識していた。

 学友たちは皆、伯爵家のもてなしに感心し大いに喜んだ。

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