43話 ヴォルガの訪問

 シエルバ伯爵邸では万全の体制でアイビス商会のヴォルガを迎えていた。


 ヴォルガはエクウスの予想通り遠方までの商談があったようで、エクウスの勧めもありアイビス商会の数名とヴォルガはシエルバ伯爵家に泊まっていくことになった。


 晩餐にはリリアージュも同席することになった。

「奥様。お久しぶりでございます。お元気そうでなによりです」

「ありがとう、ヴォルガ。エクウス様にはとても良くしていただいておりますの」

 シエルバ伯爵夫婦とヴォルガは話が弾んでいた。


「ところで、以前旦那様にお渡しした薬湯の事なのですが、その後おかわりございませんか?」

 ヴォルガは以前渡していた茶葉の効能をエクウスに直接聞きたかった。

「そうだな。口当たりは悪くないので続けられそうだ。身体の冷えを感じず最近は寝付きがよくなっている」

「そうですか。奥様はどうでしょうか?」


「わたくしも身体の調子が良くなってきています。特に手足の冷えを感じなくなり、朝の目覚めがとてもよくなりました。とても飲み安く優しいお味のお茶が気に入っています」

「それはよかったです。お二人とも薬湯がよくあっていらっしゃるようですね」

「ヴォルガ。追加の茶葉の代金の支払いをさせてくれ。しばらく妻と続けてみようと思う」

「ありがとうございます」


「ヴォルガ、相談に乗って欲しい事があるのだが···」

 エクウスはヴォルガに仕事の話があるようだったので、食事が終わっていたリリアージュは、晩餐の席を後にすることにした。

「ヴォルガ、ゆっくりしてくださいね。旦那様、お先に失礼します」


「奥様、お休みなさいませ」

 ヴォルガは右手を胸にあて、丁寧に礼をした。

「奥様はやはり素晴らしい方ですね」

「あ、ああ。ありがとう」

 リリアージュを褒めるヴォルガにエクウスは軽く返事をしていた。ヴォルガは少し気になったが、エクウスの話に耳を傾けた。


「伯爵領内で養鶏の仕事を大々的に手掛けようと思っている。近々専門家も呼ぶつもりだが、小麦同様に付加価値をつけてみようと思っている」

「なるほど。それは素晴らしいですね。鶏肉と玉子ですね。くず野菜、貝殻や魚粉を加えた飼料を試してみてはいかがでしょうか?あとは飼育環境ですね」


「やはり君に相談してよかったよ」

 エクウスはヴォルガの意見に感心していた。

「先程の晩餐の鶏肉はシエルバ伯爵領の鶏ですね。良い肉質だと思います」

「ああ、君はいつも私に欲しい言葉をくれる」

「お役に立てて光栄です」

 エクウスとヴォルガの歓談は遅くまで続いた。

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