38話 ランドル・ボーランドの想い
フェミナ伯爵家とボーランド子爵家は領地が隣接しており古くからお互いに助け合って領地の経営や改革、街道の整備等をしてきた。家格の差はあるが両家は仲がよく家族ぐるみの付き合いをしていた。
自然災害に遭ってもお互いに助け合いお金や知恵を出し支え合ってきた。
ランドル・ボーランドは数ヶ月しか変らないがアニーシャのことを妹のように思っていた。
アニーシャは結婚はしないと言っていたので、シュヴァルとの婚約を心の底から喜んでいた。
ただ、ランドルはアニーシャとの学園の噂が気になっていた。
シエルバ伯爵家が動けばフェミナ伯爵家のこと等すぐに調べがついている事だろうが、恋愛事情は当人同士の気持ちのみだ、他者にはわからない。
ランドルは学園が始まったらシュヴァルに会いに行き、アニーシャとのことを説明するつもりでいた。
ランドルは学園の者には聞かせたくない話なので、学園が休みの日にシュヴァルに会いたいとシエルバ伯爵家の王都の邸に先触れを出した。シュヴァルは快く応じてくれた。
王都のシエルバ伯爵邸はランドルが思っていたよりも立派な建物だった。ボーランド子爵の領主邸の何倍も大きい。さすがは筆頭伯爵家の邸だ。
邸を見てランドルはシュヴァルとの格の違いに怯んだが、気を引き締めた。御者が門番に名乗ると邸の前まで馬車で入れるようだった。
派手さはなく華やかで品のある玄関ホールに入ると、シュヴァル自らが執事と一緒に出迎えてくれた。
飾りは少ないが洗練された上品な服装のシュヴァルは、学園の制服とは違い2才年上とは思えぬような大人の雰囲気を漂わせていた。
「連絡嬉しかったよ。よく来てくれたね。私もボーランド殿とは一度話をしてみたかったんだ」
「シエルバ伯爵子息様には訪問を快く許していただけて光栄です」
「私のことはシュヴァルと、君のことはランドルと呼ばせてもらおう」
「シュヴァル様、ありがとうございます」
応接室に案内され、シュヴァルとランドルは打ち解けて話をしていた。
「アニーシャと君とのことは疑っていないよ。二人でいる所を何度か見かけたが、お互いに節度を持った態度だしね。なぜ君たちの事を学園の生徒たちが騒ぐのかはわからないないが、優秀な生徒である君たちへの妬みや嫉妬ではないかと思っている」
ランドルはシュヴァルの言葉に安堵した。
「他の者に何を言われてもどうでもいいのです。結婚を諦めていたアニーシャがシュヴァル様と幸せになれるなら。俺はお二人の幸せを心から願っています」
「ランドルくんありがとう。アニーシャも君のことを兄のように思っていると言っていたよ」
アニーシャの卒業後直ぐにシュヴァルとアニーシャは結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。
そんな時また学園時代の時のようにランドルとアニーシャの交際の噂が立った。
しばらくしてアニーシャが懐妊した時は、休暇の度にフェミナ伯爵家を訪れていたランドルの子どもではないかいう噂を人伝に聞いた。
無事に出産を終えたアニーシャの見舞いにシエルバ伯爵邸に訪れたランドルにシュヴァルは、
「お見舞いありがとう。妙な噂が立っているが、僕は気にしていないよ。アニーシャが産んだ子どもは僕の子どもだからね。万が一生物学上の父親がいたとしてもだよ」
ランドルはシュヴァルの愛の重さに震えた。
アニーシャの子どもの父親はランドルではない。シエルバ伯爵家嫡男のエクウスは間違いなくシュヴァルとアニーシャの子どもだ。
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