20話 王様との謁見
リリアージュは部屋まで迎えに来てくれたエクウスを見て息を飲んだ。
シルバーの髪は後ろに撫で付け整えられ、フロックコートとズボンは、リリアージュと揃いの色で薄いグリーンのシルクで仕立てられてあり、中のシャツは白で、襟には控えめに銀糸で小さな花と蔦の刺繍が施されてあった。
アスコット・タイはリリアージュの瞳の色である薄いピンクになっていた。
「旦那様。とても素敵です」
「あ、ありがとう。リリアージュ、とても綺麗だよ」
褒め言葉が女性より後になってしまい、大人の紳士として恥ずかしかったエクウスは、言葉に詰まってしまった。
結婚式の時もそうだったが、リリアージュはとても美しかった。
最初に顔を会わせた時は特に綺麗な女性だとは思わなかったが、伯爵夫人として過ごしているうちに、日々洗練された淑女に変わっている。
そんな彼女に見惚れてしまっていた。エクウスにとっては始めての経験なのかもしれない。
「旦那様」
執事はエクウスに声をかけた。
「あっそうだった。リリアージュ、これを受け取ってくれないか?」
エクウスは執事から受け取ったジュエリーケースの中から、花をモチーフにしたルビーのブローチを手に取り、リリアージュに手渡した。
「まあ素敵」
後ろに控えていた侍女はリリアージュからそっとブローチを受け取り、ローブモンタントの左胸に着けた。
「よく似合っている。イメージ通りだ。私のカフスボタンと揃いで作らせたんだ」
「ありがとうございます。大切にいたします。旦那様とお揃いの物だなんて嬉しいですわ」
リリアージュは跳び跳ねるのではないかと思うくらいに、全身で喜びを表していた。
仲のよい夫婦を執事や侍女たちは微笑ましく眺めていた。
「では、行こう」
「はい。旦那様」
リリアージュはエクウスにエスコートされて馬車に乗り二人は王宮に向かった。
王様に謁見と聞いていたが、謁見室ではなく係の者は二人を王族の応接室に通していた。
しばらく待っていると、
「お待たせしたね。エクウス久しいね。そちらが奥方だね」
王様は砕けた言い方をして応接室に入って来た。
「陛下。謁見とお伺いしていたのですが?」
エクウスが言うと、
「まあいいじゃないか。堅苦しいのは嫌いでね」
王様は、はははと笑って向かいのソファーに座った。
「君たちも座ってくれる?」
王様の言葉に従ってエクウスとリリアージュはソファーに座った。
近い、近すぎる。
国王様が正面のソファーに座っている。
顔を上げていていいのだろうか?
一通り行儀作法を習ってきたリリアージュは、この先どうしたら良いのかわからなくなってしまった。
「陛下。妻が困っています」
「そうかい。エクウスの父親と私は学園からの友人でね。シエルバ伯爵家とは家族ぐるみの付き合いなんだよ。因みに王太子とエクウスは幼馴染みだよ」
リリアージュは驚いた顔で、エクウスの顔を見ると、小さく頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます