18話 王都の伯爵邸
夕食の時間になり、リリアージュは着替えを済ませ食堂に向かった。
席に着いていると少し遅れてエクウスが食堂に入ってきた。
「少し遅れてしまったかな?」
「いいえ。わたくしも今、来たところです。エクウス様は時間通りですわ」
二人は食事をしながら街の雰囲気や買い物したことなどを話していた。
「君は花の種と苗木を買ったそうだね」
「はい。とても良い買い物ができました」
「伯爵領に帰ったら君専用の庭をプレゼントしよう」
「まあ、素敵な贈り物に感謝します」
夫婦の微笑ましい会話に使用人たちも笑みを浮かべていた。
王様との謁見は明後日の午前中に行われる予定なので、明日は早朝に出発する予定になっていた。
リリアージュは夕食後に湯浴みを済ませ、早めに就寝することにした。
エクウスは宿まで訪ねてきた領主と、仕事の話があり、就寝するのは遅くなるらしく、先に寝ていて欲しいと告げられた。
リリアージュが目を覚ますと、隣にエクウスが寝ていた。
夜明け前の薄明かりの中、艶やかな髪と整った顔立ちのエクウスに見惚れてしまった。十歳以上の歳の差を全く感じなかった。むしろ彼の醸し出す独特の色香に胸が躍っていた。
エクウスはリリアージュの熱い視線に気がついたのか、ゆっくりと目を開けた。
「どうしたの?」
エクウスの言葉にハッとしたリリアージュは我に返り、
「旦那様のお顔がとても美しいので、見入ってしまいました」
エクウスは「ありがとう」と呟いて、目線を逸らし真っ赤な顔になったリリアージュの頰に、優しいキスをした。
旅支度を整えたシエルバ伯爵一行は道中、昼食と休憩を兼ねて途中の街に立ち寄り、それから王都に向かった。夕方には王都のタウンハウスに到着する予定だ。
王都に近づくにつれて人が増えはじめ、徐々に活気が溢れてきた。
王都にあるシエルバ伯爵家のタウンハウスは、王宮の東側の高台にあり、街の繁華街からは離れており、景色もよく広い土地の中のふ静かな場所に建っている。邸の部屋の窓からは王都の街並みの一部が見渡せた。
伯爵邸の隣には大きな森と湖があり、他の貴族たちの屋敷とは距離があった。
緑の木々の中、白を基調とした建物が映える。
正門を入ると邸に続く路の両側には、均整の取れた庭が広がっていた。邸の前には大きな噴水があり、美しい水柱が上がり太陽の光に反射してキラキラと光り輝いていた。
王都に滞在するときにだけ使われる建物とは思えない程大きな邸だった。
「わぁ」
リリアージュは目を輝かせ、感嘆の声が漏れていた。
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