14話 本邸への道のり
貴族にとってパーティー会場の使用人や給仕などは空気のような存在で、人として扱いお礼や労いの言葉など、余計な言葉をかけることすらしないのが普通である。
件の紳士やご婦人のことが異例で、簡単に食べ物や酒類の好き嫌いなど、本当に信頼した人以外に教えることはない。
どこで誰が聞いているかもわからない夜会などでは、小さな噂話が真実の話になり、要らぬお節介や陰口、偏見に繋がることが多い。
自分たちの仕事振りを認められたホールの使用人たちや厨房担当者のみならず、他の使用人たちまでも自然と士気が上り、更に披露宴会場は和やかな雰囲気になっていた。
披露宴は真夜中を過ぎた頃から人がまばらになっていった。
招待客の多くは他の領地から来てもらっているので、披露宴会場と同じ別邸の中に宿泊の準備と部屋割りが既に整えられていた。
気分よく酔いつぶれている者、再会を名残惜しむ者などや親族たちがホールに残っているだけとなっていた。
エクウスとリリアージュは、ホールに残っている人たちや親族にお礼の挨拶を済ませ本邸に向かうことになった。
本邸に向かう為に馬車が用意されていたが、早朝からの結婚式の準備や披露宴の熱気にあてられ、興奮気味になっていたリリアージュは、エクウスにエスコートをお願いし、ゆっくり歩いて本邸に向かうことを切望していた。
本邸まで徒歩だと5分位だが、二人はとてもゆっくりした足取りで歩いていた。
「エクウス様、我儘を言ってしまって申し訳ございません」
「たまには二人で散歩をするのもよいものだね。今度は明るい時間に庭園を散歩しよう」
「ありがとうございます。楽しみにしております。今日は星がとても綺麗ですね」
「ああ、美しい夜だ」
本邸に着くと使用人たちは既に整列しており挨拶をしてくれた。
「お帰りなさいませ。ご主人様、奥様」
すると侍女たちは待ち構えたように、エクウスからリリアージュをさらうように、夫婦の部屋に連れていった。
「奥様、お疲れでしょうが湯浴みの準備が整っております」
「え、ええ」
リリアージュは曖昧な言葉しか出せず、侍女にされるがままになっていた。
鮮やかな手付きでドレスを脱がされ、あっという間に下着姿になり浴槽に連れていかれ、裸にされたあと湯船に浸かった。
髪や身体を丁寧に洗われ香油を塗られて、シルクのナイトドレスに着替えさせられた。
「奥様、お綺麗です。旦那さまが来られるまでこちらでお待ちくださいませ」
リリアージュの部屋の内側の扉は夫婦の寝室になっていた。テーブルには冷たいハーブティーが用意してあったので、湯浴みの後の喉の渇きを感じていたリリアージュはソファーに座り喉を潤した。
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