11話 披露宴①
教会からシエルバ伯爵邸の夫婦の部屋に到着したエクウスとリリアージュは、軽くお色直しをした後、招待客を迎えることになっていた。
コンコンコン
「お疲れの所、失礼いたします」
筆頭執事のようだった。
「なんだ何か不具合でも?」
エクウスは筆頭執事を部屋に招き入れた。
「いえ、先程の教会の結婚式を見に来ていた領民たちからの差し入れが、想定外の量でして···。わたくし共の乗っていた馬車には乗りきれず、一旦帰って来ましたが、どうしたものかとご相談に伺いました」
「···差し入れか?」
「はい。主に新鮮な野菜や花なので、今日中には運びいれた方がよろしいかと存じます」
エクウスはしばらく考えた後
「そうだな。直ぐに使用人を向かわせ領民たちから荷馬車を借り、運搬に必要な人数を臨時で雇い、彼等に金を払ってやってくれ。もちろん荷馬車の代金もだ」
リリアージュは領民たちの心遣いに感激し、寛大なエクウスを尊敬した。
「エクウス様、わたくしとても幸せです。執事長、わたくしに代わって領民の皆さんに感謝を伝えて下さい」
「奥様、承知いたしました」
「そうだな。領民たちには何かお返しを考えよう」
エクウスとリリアージュはお互いに微笑みあっていた。
結婚披露宴はシエルバ伯爵邸の離れにあるダンスホールや夜会などが行われる場所だった。
ホールの入り口で新郎新婦が招待客を招き入れると、招待客たちは席に座り飲食や歓談を楽しんでいた。
楽団の演奏がゆったりとしたテンポから、新郎新婦の入場に合わせて華やかな音楽に変わった。
エクウスはタキシードの上着をゆったりとした物に着替え、リリアージュはヘッドドレスを取り、ウエディングドレスの上から薄いピンクのオーバースカートを着けていた。
オーバースカートはオーガンジーに色とりどりの花の刺繍が施されている。リリアージュも手伝ったが、主に母が刺してくれた刺繍だった。
髪にはオーバースカートとお揃いのリボンを結んでいる。
シンプルなウエディングドレスがとても華やかになっていた。
エクウスは披露宴用にと新しいドレスを仕立てるつもりでいたが、純白のウエディングドレスの仕上がりが気に入っていたリリアージュは、オーバースカートでのアレンジを希望していた。
刺繍が得意な母の力を借りて、思い描いていた通りの装いとなった。メディウム夫人は娘と共に刺繍が刺せたことがとても嬉しかったようだった。
オーバースカートは招待客から絶賛された。
「あのオーバースカートはどちらのブティックなのかしら?」
「素晴らしい刺繍だわ」
「なんて華やかなのかしら」
招待客の女性たちは口々にささやいていた。
女性たちの称賛を聞いたリリアージュは、
「こちらの刺繍はメディウム男爵家の母が刺してくれたものです」
と少し控えめに呟いた。
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