第38話 統一国家を目指す

「日本国はファジェーエヴァを迎え入れることに調印を行った。彼らは正体不明の闇。モンスターの被害者なのだ。そう我々と同じく」


 この時、すでに日本の領土は、地球の四十パーセントを持っていた。


 復興と、先進的魔導技術の供与。


 前にもあったが、またいくつかの州で、受け取った瞬間に分解したようだが、簡単には模倣できない。

「どうだ。意地の悪い技術の詰め合わせ。新型積層型魔導具は解析できまい」

 錬金術により、金属を折りたたみ積層構造としている。

 剥がせば折れるし、ミルフィーユの皮のような部分。そこも実はウェハースのように重ねてある。

 むろんダミー回路も入れてあるから、無駄も多いが仕方が無い。


「性善説が通じない」

「まあ民族的な物だからね。道徳教育をしますか」

「それにしたって、親から受けてる教育。これが駄目だ。今だけ良ければとか自分だけ良ければと言う雑さは、簡単に覚えちゃうんだよね」


 日本となった州で結構問題が出ているらしく、民族レベルが上がるまで、州のランク分けをして移動制限をしようかと言う話が出ている。


 こんな問題が出始め、国としての負担が大きくなると、州、日本の本土側では県だが、代表達は面倒になったのか、国は国と言って、国政を決める組織を作ろうと言いだした。


 結局は、そうなって行くようだ。


 そして、空中に浮かぶメッセージを見た某国。

「なぜあんな技術を? 死ぬがいい」

 世界的な統治などないこの時代、簡単にミサイルのボタンが押された。

 すでに無くなった都市も含めて、十数本が日本に向かう。


「アラートです。ミサイルが来ます」

「防御シールド展開。一応、迎撃用魔導システム起動」

 なぜか決定は、神谷家のお茶の間で行われる。


 代表エイミーにしがみつかれ、涙のお別れをして、何とか帰ってきた。

 良いネタができたと、映像を流したらこれだ。


「目標は日本自体か、ファジェーエヴァの住人か?」

「さあ、どっちにしろ守らないとね」

 そう言いながら、緊張感もなく茶をすすり、最近はまっている大判焼きをかじる。


 この大判焼き、見た目は同じだが、中身が違う。

 スタンダードなあんこ。

 カスタードクリーム。

 チョコクリーム。

 たこ判。

 朝採れわさび。

 朝採れイチゴ。

 朝採れイワナ。

 朝採れ牛ステーキ。


 まあ、美味いかどうかは判らないが、たこ判は息吹の作品。皮部分もしっかりたこ焼き仕様で出汁がきいている。

 わさびは、光希。当然いたずら第一。

 イチゴは、杏。杏なのに、イチゴ。まあいい。


 イワナの塩焼きは、シーヴ。

 牛ステーキはアデラ。

 この二人は、おにぎりのような物だと思っていたようだ。

 甘口の皮が微妙にあわないが、本人達は、「甘塩っぱくておいしい」らしい。



 命令を受け、本船で命令は速やかに実行される。

「日本。防御シールド展開」

「発射位置特定。着弾と共に、魔導弾を発射」

「準備完了」


 規定通り、準備は整う。


 さて、今は国際法も有効ではないが、絶対防御ラインをこっちで定めている。

 非常時でも、周辺国のように他国に割り込むようなことはしない。


 そして、数分後着弾し、ミサイルは破壊される。

 核はなかったようだ。

 着弾に呼応して、魔導弾が打ち上がる。


 むろん、確実に目的地点を狙うため、速度は音速の三倍程度に抑えられ、光学、音響、赤外、レーダー。すべてに対してジャミングをされている。


 完全不可視のミサイル。目標地点では、魔導弾が来ていることも知らないだろう。


 着弾と共に、地下三十メートルまでもぐり、目標深度で超高熱を発生。

 上部構造は、半径三百メートルほどの範囲が数千度になる。


 そう、派手な爆発などは起こらない。

 ただ燃やし尽くす凶悪な武器。

「環境には、影響ありません。エコでしょ」

 ファジェーエヴァ人に言わせるとそうらしい。


 だがまあ、受けた方からすると、地震波も観測されず、通信のみが途切れ、現場は円形に溶けた土が固まり、所々に、スラグが固まったような物がある広場ができているのみ。簡単には掘り返せない。つまり……


「これは一体何だ? 何が起こった」

 こうなる。


 今回ミサイルを撃ち出した拠点は、すべて使用できなくなった様だ。


「作戦終了。通常監視へ戻ります」

「警報解除」



「終わったか。うがっ」

 お決まりのように、光希は自分でわさび焼きを囓った様だ。

 効き目がある様に、鮫皮でわざわざおろした逸品。

 まあ熱が加わっているから、多少はマイルドだが……


 たこ判を食べている息吹を見て、シーヴがまねをする。

 そう生地も中身も違う。


 シーヴが今回取ったのがたまたま、カスタード。

 たこ焼きソースと、マヨネーズが付けられ、口の中へ。

「変わった味ですね」

 そう言いながら、もぎゅもぎゅと食べている。


 意外と何でもいけるようだ。


 その頃、自分たち優先主義でやっていた企業連合の一部で、住民による反乱が始まった。

 そう、映像を見た。

 そこで見た、豊かな暮らし。

 王のように、トップだけが良い暮らしをしている現状と、あまりにも違う。

 皆が笑い、美味そうなものを笑顔で食べる。


 今まで、情報も何もなく、きっと世界中がこんな感じだと諦めていた。

 だが彼らは、それが違う。ここだけがこんな状態なんだと、知ってしまった。


 もう、盲目的に従っている状態には戻れない……

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