第34話 穢れ

「出会い頭パーンチ」

 光希が軽く殴っただけで粉砕され、動かなくなるマシン。

 以降、息吹達も続く。


 いい加減な攻撃だが、浄化をしながら進んでいく。


 その後も、ぞくぞくとやって来る人型、戦車型、動物型。


 よくもまあ資源を食い潰し、作ったものだと思うくらいやって来る。

「これ集めてリサイクルすれば、儲けだね」

 そう言って、ふとじいさんを見ると、壊した片っ端から亜空間庫に放り込み。足場を確保していた。


「しまった。こういった、ちょっとした所で差が出るんだな」

 煩雑な感じで転がった部品達だが、押されて、姿勢を崩したときに足に絡むときがある。


「経験の差だな……」

 杏の所にも分かる様に、回収する。


 それだけでこっちをちらっと見て、理解したようだ。

 回収を始める。


 問題は、シーヴ達。

 彼女達は魔導具依存で、魔法として空間魔法が上手く使えないようだ。


 魔導具の方は、あまり入れると使用魔力量が沢山必要になる。

 なぜだか判らないが、空間把握に何か余分な魔法を使っているのかもしれない。


 空から来た飛行機が何かを落とした。


 とっさにシールドを張るが、一瞬でシールド構造の表面、数枚が消えた。


 シールドは、属性などを変化させながら、数枚のウエハース構造になってる。


 まあ俺のシールドは良いが、杏達のシールドを補強する。

 地味に特性をあわせるのが面倒。

 仕方が無いので、俺のシールドをかぶせる。

 シールド同士が、ガンガンあたっているが、問題ないだろう。


 今の爆弾で、敵が…… 素材が蒸発してしまった。

 なんてこったい。

 飛行機はぶった切る。


 マザー本体は、高山の氷河の奥に造られている。

 山体の標高の高い所に穴を開け、冷気を吸い込んでいる。

 構造は、氷室と同じ。


 さっきの爆弾で、氷河は消えてしまった。


 マザー自体は、魔におかされていることが判り、すでに既存の管理システムから切り離されている。

 今の新しいシステムは、一応、光魔法で防御されているらしい。


「壊しちゃって大丈夫です」

 そんなお墨付きも貰っている。


「ひでえ、全部消えちまった」

「そうだな。もう山ごと消すか?」

 じいちゃんが面倒になったのか、そんな事を言い始める。


 言っただけかと思ったが、本気だったようだ。


 探査を撃ち、ホントなら届かない所へ、そのシグナルを届かせる。

「一体どうやって?」

「ヒントは周波数だ。研究しろ」

 言いたいことは分かる。

 物質は固有の周波数と共振をする。それを使って、何かをしていると思うのだが、細かな事は判らない。


「結構頑張ったんだが、まだじいちゃんに届かない」

 こっちへ来て確か五年。その後地球で、闇の三ヶ月の時すでに何かをしていた。

「教えて貰う者と、自分で理解する者の差かな?」

 じいちゃんは、色々な物に対する理解が早い。


「経験を積めば、そうなってくるもんだ」

 そんな事を言っていた。


 昔コースの中を、ただ走らせる車のおもちゃがあった。

「慣れるとな、シャーシが。そして、ボディが囁くんだよ…… ここは削って良い。ここはだめだ。重心も、下げすぎるとジャンプ時の姿勢が悪くなる。そしてモーターと電池。そいつも旬がある。ほら、聞け息吹。ミニ○駆の囁きが聞こえるだろう」

 そう言って、奴は笑っていたっけ。


 数字に出せない、何かを感じる事が出る感が、職人には宿るのだろう。


 そんなことを考えていたら、じいちゃんが光魔法で岩盤を撃ち抜いた。

 どうせ結晶に沿ってとか言うんだろうな。

 すると、振動が感じられる。


「ありゃあ。聞いていなかったが、破壊されると、自爆装置が働くようだな」


 振動と共に、山体が崩落を始める。


「あれなら最初っから切ればよかった」

 エベレストのような美しさを持った山だったが、瓦礫が崩れるようにその高さを変化させる。


「いいさ、これで裏にある草原が、砂漠化から逃れられる」

 口ではそう軽口を言っているが、まだじいちゃんは探査を行っている。


「来るぞ」

 地面に向けて、シールドを展開する。


 ガンガンに突き破られる。

「なんだこりゃ?」

 物理でも魔法でもない。

 黒い何かが、地中から突き上がってくる。


「ふんぎゃあ」

 声がしてふと見ると、杏がお尻から口まで黒い何かに突き通されていた。


 シールドは張れているが、それを通っている?


「ごめん。モンスターに…… お尻初めてだったのに」

 意外と元気。やはりこの黒いの物理じゃない。


 そう思っていたら、抱っこしている杏が、ビクンと撥ねる。


 よく考えたら、しょっちゅうコイツ。モンスターや何かに捕まっていたよな。


  抱きながら浄化し、治療を始めるが、ズボンも破れていないし、外傷はなさそう。

 だが、口からは黒いもやが出ている。


 目が黒くなり、赤い光が灯る。


 額から角が生える。

 牙も伸び、そう鬼だな。


 手には凶悪そうな爪が生え、それが振るわれる。


 だが、光のシールドを展開。それだけで止まる。

 意識は無く、反射的に出ただけのようだ。


「まだ、俺の名前は呼んでいるし、もう一度浄化」

 浄化をすると、周囲からまた霧が集まってくる。


「黒い霧全部入っちゃったの?」

「そうなのかな?」


「鬼に変化。穢れか」

 そう言ってじいちゃんが、何かを振りまく。

「何これ?」

「塩。昔から、穢れを祓うのは塩と決まっているが、きかんようだな」


「足りないんじゃないかにゃ?」

 様子を見ながら、シーヴが言ってくる。

「試してみるか?」

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