第28話 レジスタンス

 ヨーロッパの経済団体。

 つまり共和国では、知識階級者と、労働階級者とで明らかに階層が分かれた。


 つまり、貴族階級と市民のようなもの。

 そんな中で歴史は繰り返され、レジスタンスが組織されていく。


「わが、『暁の解放団』は、地下通路より侵入し、管理者達を拘束する。一般会員は地上において、抗議行動を起こし注意を引いてくれ」


 セルラーフォンを独自改良し、皆に伝える。


 極秘のサーバを複数台クラスター化して、全員が接続をしている。

 遅延つまり遅れることなく、リアルタイムで命令を伝達できるようにしてある。

 企業側からの、潜入者によるデマが怖いからである。

 情報を操られると、一気に組織が壊滅することもある。


「そう、戦いにおいて、情報は重要よ」

 民衆を導く自由の女神と同じく、彼女はマリアンヌと言う名。

 フランス革命の再現だと、彼らは大いに盛り上がる。


 だが電力に通信網。

 すべては、見られていた。

 マリアンヌ=ベルナール達は盛り上がっても、所詮は素人。

 

「楽しそうなお祭りをするようだ。七月の一四日には少し早いが、良いだろう。たまには息抜きも必要だ」

 七月一四日はフランス革命記念日。


 そう、掌の上で彼らは踊らされることになる。


 捕らえられ、隠し持った武器まで取り上げられ、現在再奪取中のモンスターが徘徊する、元農地へと解放される。


 そう、現在は効率重視のため、専任の軍は存在せず。傭兵がその役割を持ち、企業体と契約を行っている。

 つまり前線では何が起こるか判らないという前提の元、レジスタンス達は、傭兵達のおもちゃとして、放たれた。


 助かるためには、武器を持つ彼らに請い願うしかない。

 自由だ。解放されたのだから、勝手に生きろ。

 やり方が気に入らなければ、我らの管理エリアに入ってこなければ良い。

「君達は、自由をつかみ取った。頑張りたまえ」

 そう言って。



「よし行くぞ」

 彼らもまた、潜入を行おうとしていた。

 山間にいきなり出来た? いや発生したニュータウン。

 そこに住む、主とした人種は、欧米人。


 そこに向かう、かわいい子を見たと、クラスメートの中で噂が流れ始めた。


 そうこれも、情報操作による。

「もうぼちぼち、いいだろう」

 重要な事はすべて、神谷家の家族会議で決まる。

 そこからトップダウンで、町長へと話が流れる。


「ニュータウンを、一般の町民に開放し、あわよくば混血を進める」

 言い方は悪いが、民族同化政策。


「普通田舎へ来ると、地の人間になるには、三世代という言葉がある。そんなもの面倒だ」

 そう、田舎では余所から来た者は、その人が死ぬまでよそ者だ。

 子供の世代で、少しなじみ、孫の代でやっと地の者だと認められる。


 同じ土地で、物心ついた時から生きて来たという繋がりは、かなり深い意味がある。

 大抵意見を言っても、あんたは、余所から来たから知らんだろうがと一蹴される。


 まあ、それを打破するには、地の人間の家に入ることだ。

『ニュータウンに向かうかわいい子を見た』

 それ自体が、餌だ。


 入り口には、特にゲートも何もない。

 そして、災害対策型新型住居モデル地区の看板。

 向こうの奇妙な家は、最新型ですよと喧伝をする。


 少し普通の家を建て、喫茶店などや商店を区画として開いている。

 これは住人が、こちらの生活に慣れるために造ったのだが、それが、外から来たもの達に安心感を与える。


 身近にあるヨーロッパ。

 高校生達の異性に対する興味は真っ盛り、そこに外国人というスパイスが落とされると、入れ食いとなった。


 むろん大人達はいい顔をしない。

 だが、今まで田舎で出逢いが無かった者達が、ちらほらとニュータウンに引かれていく。


 表向きは、災害避難者。

 嘘は言っていない。

 惑星ファジェーエヴァは、滅亡の瀬戸際だ。


 誰がなんといっても、避難民だ。

 災害は多分これから起きる。


 そして、交流目的で独身者を集め、定期的にパーティが開かれる。

 多少魔法を使っても、最近は普通だと認識されている。


 そして意外と、獣人達が混ざっていても受け入れられていた。

 本物だと分かると、少し腰が引けるようだが、愛があれば乗り越えられるようだ。


 シーヴ達は我慢をしているようだが、基本性的な事が好きで、番となると甘え上手なのだ。



 子供達は言い始める。

「○○ちゃんと結婚する」

 頭の固い親たちへの反抗が、複数の家で始まる。


「余所者だろ」

「それがどうした。向こうから見るとこっちがよそ者。それでも和やかに受け入れてくれた。父さん達は、人間として器が小さい」

 びしっと言う感じで、指をさされる。


 そして連れてきた女の子は、金髪碧眼。まるで人形が歩いているような容姿。

 おとうさんは、思わず奥さんを見てしまう。


「お互い様よ」

 奥さんから、怖い一言を貰う。


 そして、ニュータウンでお相手を見つけるのが、トレンドになっていく。


「おい、あいつ。あの顔で。あんな美人さんを……」

「たしか、もう四〇近かったよな?」

「くそう、俺も行くぞ。あいつより、俺の方が顔がいい」

 それは広がっていく。


 意外と皆、あいつよりはと思う、基準がある様だ。

 周りから見ると……


「いっしょだよ。がんばれぇ」

 ニュータウンの入り口を、見張る息吹達がいた。

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