第18話 広がる復旧

 そこからは、話は早かった。


 各県庁に専用の魔導具達が届く。

 地元の工務店などに話が行き、一気に工事が始まる。


 主要企業にも電気が送られ、電話などが復活をしていく。


 途中の埋設などが不要なため、経費も安上がり。

 慣れている人なら、DIYでも出来る作業だ。


 そして、道路を掘り返さなくていいなら、平らにして舗装するだけ。アスファルトの材料が無いため、コンクリートが主となる。

 そこが、ネックとなる。

 だが今までの停滞とは違う。

 一気に活気が戻ってくる。


「光希様。あの変なものではなく、小型の探査船がありますけれど」

「いや良いんだ。いきなり見慣れないものが来たら警戒するからな。お前達は宣言をしているし。密かに広げれば良い」

「ああ。宣言をしておいて、実は水面下で混ざっていくと」

「そうだ」

 だが問題は獣人だがどうするか。


 日本人なら、なじみは早いだろうが、ヨーロッパではワーウルフ伝説がある。

 それに、過去の事例でもアジア初の技術を嫌うからな。

 過去に繰り返された難癖。


 長年かけて築いたものを、粗悪品をばら撒き破壊する奴らも居るし。


 まあ、とにかく日本を復活させよう。


 復旧の支援は、関西と中国地方、九州へ渡っていく。

 だが直接被害を受けた地方は、物理的被害と、その後に来たモンスターの被害も大きく、近寄れない地域も沢山あった。


 そして、その相談はなぜか、この町にまでやって来た。


「生き残っていた警察や、自衛隊ですが、武器や弾丸の補給がままならず」

「まあ、そうだろうな。数社独占だったから。散弾なら工場は無事だぞ」

「まあ、そうですが」


 町長たちと話していて思い出す。

 自動の駆除装置がありますから。


 確かそう言っていた。

「よし、一地方幾らで請け負ってこい」

「えっ。大丈夫ですか?」

「何とかする」

 最近町長とかの態度がガラッと変わった。

 話をするのに楽で良い。


 

「旧地図ではこの辺り一帯だ。広島周辺」

「わかりました。マッピングをして、広いので五十機ほど向かわせます」

 大きさは、長さ一五〇センチほどの機体。

 直径百五十ミリほどで一メートルほどある長い筒が一本と、直径一〇センチほどで五〇センチほどの短い筒が、長い筒の下に付いている。


「魔導砲の高エネルギータイプが一門と、連射タイプが二門。そして機体下部から、クラスター型の魔素かく乱機雷が放出できます」

「魔素かく乱機雷?」

「ええ。近くにいると、酔いますのでご注意ください」

「なるほど」


 そうして、じいちゃんの命令で、攻撃部隊が発進をした。


 その頃、俺は部屋でへたばっていた。

 連日のお勉強と実習。

 先は長い。


 つい、うとうととしてしまう。


 それを、見つけて、忍び込んでくる杏。

「今日は、じゃまな、犬と猫がいない。今ね」

 中学校の頃から憧れていた、お嫁さんへの儀式。


「キスをしたのが中学校? あれその前? まあ、もう良いわよね。二十歳は越えたし、先に進んでも」


 にまにまとしながら、人のシャツを脱がそうと、ボタンを外していく。

 ガバッと捲るが、肌シャツがいく手を阻む。


「むう」

 シャツの裾を引き出し、両手を滑りこましてくる。

「うふふっ」

 すごく楽しそうだ。


 ずっと気が付いているが、とりあえず無視をする。

 なんか胸の辺りに張り付き、うへへと、気味の悪い声が聞こえる。

「んー、ふふふ」

 なんか鼻歌を歌いながら、手が下に。

 ベルトが外される。


 どうしようか?

「おい杏」

 その瞬間すごく驚いたようだ。きっと、猫なら一メートルくらい飛び上がるような感じだな。


 胸もとから、顔が此方を向き見つめてくる。


「えー。寝てるなら、体を締め付けているのはよくないなぁと、緩めていると、なんか元気になっているから、様子を少し」

「それは、すまない。気になるのか?」

「えっ。ちょっとだけ。うん」

 変にテレテレしながら、上目遣いにこちらを見てくる。


「昔、見せっこしたな」

 そう言って、にかっとすると、手を伸ばす。


「あーうん。えっちょっと。それは流石に……」

「ほー。だけど、見ないとできないぞ。ほれっ」

「きゃー。ちょと待って。こらっ」


 そんな感じでじゃれていると、廊下では犬と猫が並んで座っていた。

「どうする?」

「今日はやめようか? 私の所へくるかい?」

 少し聞き耳を立て、シーヴはアデラの部屋へ飲みに行くようだ。



 杏は念願を果たせて、幸せだった。

 まあ、そう言うことになった様だ。


 だが……

「杏殿、息吹様の横に立つのであれば、バカではいけません」

 勉強の日々が始まることになった。


 シーヴとアデラの中では、光希と息吹は最低でも中央政府マグナコーキの議員レベルとなるだろうと考えている。

 そう。この星を導くもの。


 その伴侶たるもの、共に意見を交換できるレベルにあらねば。


 欲しがるならば同等の能力を持て。

 良い意味で、マグナコーキでは、権利が等しい。


 同じ強さと知能を求められる。

 身体は、光希によって改造された。


 あれ? 私たちも横に立てるのでは?

 そのために、光希様は?


 えっ。伴侶の候補?


 杏に、お勉強をたたき込みながら、ふと二人は思いつく……

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