第19話 復旧する中で

「おい。いきなり復旧が始まったな」

「ああ。三年も何も進まなかったのに」

 そんな話をしていると、作業を終えた設備屋が首を突っ込む。


「新技術。こんな小さなモノで一軒分の発電が出来る。説明だと、今周りの空気中に魔素とか言う物があるって言う話だ。ほら一部の人間が、火を出せるとかって騒いでいただろう」

「おう出せるぞ。ほら」

 会話をしていた一人は魔法使いのようだ。


「おお、すげえ。その魔法の種で、電気を作るらしい。後水もな。だから送電線や給水管の工事が必要ないから、直接工事が出来る」

「へー。一体どこからそんな技術が?」

「作っているのは、高知の会社らしいぞ」

「そりゃすごい」


 それに、高圧は免許を持っていなくても、今回は電気工事士の二種で工事が行える。

 動ける人数が違う。


「作業用の車も今は無償で、電気化してくれる。ありがたい話だ」

 そうは言っても、エンジンをモーターに入れ替えるだけ。

 むろん、アクセルも電気センサーを付け、メインコンピュータのエンジンコントロール部分をバイパスして、サブコン。つまり別のユニットでコントロールとか、加工をする必要がある。


 そう言って、会話をしている頭上を、見たことのない物が飛んで行く。

 なんだありゃ?




 攻撃部隊の機は魔力パターンにより、対象を判断する。

 実は、ハイヒューマン組は、モンスターと判断される。


「部隊、目標範囲に入ります」

「録画はしておけよ。座標とな」

「はっ。行っております」


 モニターに、攻撃機からの影像が映り始める。

「かなり、大型の個体ばかりだな?」

「そうですね。魔力濃度が高く。こちらの兵器も二十パーセントほど威力が上がっています」

「銃身とかは、大丈夫なのか?」

「大丈夫です」


 高エネルギータイプの砲撃で、超大型のベヒーモスが脳天から撃ち抜かれ、霧散をして行く。


 どこからかやって来たワイバーンも、連射タイプで翼を撃ち抜かれ、次の瞬間には胸の魔石を破壊される。


「おう。これなら、行かなくても大丈夫そうだな。任せた」

「はっ。お任せください」

 突入時にばら撒いた、魔素かく乱機雷がかなり有効なようだ。

 どのモンスターも動きが鈍い。


 農機具メーカーにも連絡が行く。

 そうエンジン載せ替えキットの説明だ。

 まず生産をあげる。

「現在被災地を含めて、休耕田が随分あります。これを復活させる。お年寄りや、未経験者に機械を貸し出し、従事していただきます」

「現在流通は止まっていますよね」

 会場で手が上がる。


「そうです。ですが、暫定的にでもかなりミクロな地産地消を行います。そうすれば、災害時にも強く出来る。今回で、皆さん判ったはずです。余所から買えばいいというのは、綱渡りであると。地元の産業はなくしてはいけません」

「おお、そうだな」

 そう今は、非常時だから分かる。


 だが……

「だけど同じ面積で作るなら、単価がやっぱり重要だしな。皆が同じものを作るのは仕方が無いだろう」

 そう。作っている農家も食べなければいけない。

 それなら、言っているように同じ面積なら、販売単価は重要になる。

 人手が必要なく、簡単で単価の高いもの。そこに人気が集まる。


 昔田んぼだったところが、全部イチゴ農園になったところもある。一面生姜畑とか……


 政策により、木を植えろ。

 もう要らない。

 米を作れ。

 もう要らない。

 そう生産者は振り回されてきた。


 だがその命題は、すぐには対応できない。


「今欲しいのは、米や輸入に頼っていた小麦。その後が野菜。果物などはその次です」

「今ある畑を、潰せとかは言わんよな」

「ええ。今言った作物は、復活させる休耕田で優先的に作ります。むろん優先する以上。価格は高いですがね」

 とまあこうなる。


 フルーツなどは、生活が豊かであればこそ。

 そして、その種品目には、ファジェーエヴァの植物プラントシステムが導入される。


 本来は、建物を作り積層型で運用されるが、今回はビニールハウスを作りその中で、土壌作り、肥料の添加、育成から追おい肥、収穫まで。


 役場の農業関係者が予想する物の、遙か上を行っていた。

「これ、人は要ります?」

「異常があった時に、知らせて貰うにゃ。機械は、設定により判断するが、目の方が早くて正確」

「そうですか」

 休耕田は復活し、持ち主が運動がてら見回りにすることになった。


 年間三期作。

 そうして、一期目の様子を見て、育成は最適化されていく。

 この状態でも長雨や、日照り、台風はやって来る。

 ファジェーエヴァの植物由来のハウスは、天候に左右されず、植物プラントシステムが完璧に管理をする。


 そんな中、必要の無くなってしまった、太陽光発電所の跡地。

 登記簿では、アメリカ人の持ち物だが、連絡は取れないし、日本もなくなった。


 県では急遽、土地の検査が行われる。

 連絡が取れない人の土地には、立て札が立ち。一年以内に連絡して、県に対して再登録を行う事が書かれていた。


 混乱に乗じたシステム変更。

 他の外国人名義の土地も多数ある。

「管理できていないなら、貰っちまえ。もう日本はないんだ。この際、土佐ノ国を名乗るか?」

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