第13話 復旧開始

「わああ。明るくなった」

 山野家に魔導具設置と説明中。


「こうして、この宝石に手をかざせば良い」

 真鍮の筒。見た目は素通しなのに、下側から水が出る。

「へえ。不思議ねえ」

 そう、最初は単に魔導具を設置する予定だった。

 うちは、電源を何とかすれば井戸が使えたから。

 だが普通の家だと意外と不便。


 喜んでくれるのは良いが、自動給湯とか、トイレのフロートとかが使えない。それは俺としては不満で、じいちゃんに相談をする。


「そうだな、水タンクを作って、ポンプだな。問題はタンクの給水だが。ついでに電気を復活させて電化住宅にしよう」


「うん。上の魔石に触れて給水が始まると、溜まってきて下側の魔石に水が触れると水が止まり。減ると出始める」

「おう、これで良い」

 シーヴに御礼を言って、タンクを錬成する。


 プラスチックに似ているが、セラミック。内側には焼き物のようにガラス層が作られている。タンク容量は三百リットルくらい。一日で一回空になる程度にしないと水が傷むからその程度にした。

 一番底には、一応泥抜きのバルブを付けて、少し上で水道管側と接続をする。


 当然、その下に自動式の給水加圧ポンプをくっ付ける。

「これでどうだ」


 ガスの補給は出来ないから、完全電化となったが、ほぼ元の生活ができるようになった。


「この作りを、役場の人間に見せて復旧のベースにしよう」


 その日のうちに、町野さんを呼んで設備を見せる。


「これなら、復旧に手間がかかりませんね」

 一緒に来た設備屋さんも納得してくれた。

 西村 功作にしむら こうさくというらしい。


 電気は分電盤の主幹下。つまり屋内側を切り離し、魔導具を設置。新たにブレーカを設置して魔導具の二百ボルトを繋ぐ。

 きちんと単層三線式。

 全部そのまま使える。


「よしよし。これで良い」


 こうして町内。いきなり電化が進み始める。

 そして町は、復旧だけ考えていたが、水道代と電気代が無料になった。


 もう少しして、電磁パルスで壊れた設備が復旧する中、電力会社は焦ることになる。

 魔導具は新型の発電機だと苦情を入れ、法的な発電施設だと言ったら、発電ではありません。あくまでも魔力の形を変換しているだけで、魔力です。と、まあ地球人には理解できないことを言われて、電気設備が使える魔法という事で納得させられた。


 実際、感電しても目的が違うからあまり痛くないし火傷もしない。

 これが、雷魔法は感電する。

「ほら、雷魔法は、攻撃ですから」

 そう言うことらしい。


 この魔導具による復旧は、急ピッチで進んでいく。

 田舎から町へ。

 本署に連絡が取れない中、魔導具は認可を受ける。

 そして、材料の物納が出来ないからと、金が支払われる。


 そう、地銀のシステムに電気が来て、ATMとかも復活していく。

 それも、無料の電気。


 三層三線式も魔導具が創られる。


 多くは山の上に立ち、破断した高圧送電用の電線がなく、復旧が出来なかった電力会社。いきなり広がり始めた魔導具電気に、ドンドンシェアが奪われていく。

 小型軽量で無料。感電しない。


 そして同じく、水も。

 どうせ老朽化していた浄化システム。

 この際復旧しなくていいやと、市のほうも切れたようだ。

 取水システムの復旧とひび割れた沈でん池ちんでんちの改修。

 分断された配水管はいすいかん

 予算の目処など立っていなかった。


 水道管の改修と埋設をしなければ、道路の復旧も早い。


 苦節三年。急速に復旧が始まりだした。


 問題は燃料。

 実は作れる。だが。

「魔導具で創れる。というか魔導車が本国では走っている」

「そうなんだ」

「光希様の仰った電動化のさらに先が、最近の魔導車なのよ。にゃ」

 薄い情報パネルが出てくる。


「これが、ダイレクトドライブ魔導システム。魔導具は、意外と細かな調整が難しいけれど、それを克服。ステアリングの切れ角でも、各シャフトの速度を変えている。にゃ。重力と風すべてを使い急発進、急停車。急な方向転換すべてに対応。プロトタイプでは、体が付いて行かず、五人ほど亡くなったにゃ」

「駄目じゃん」

 そう言ったら、振り返りながらこっちを睨む。


「いや、性能を落とすのは簡単なんだって。にゃ」


 シーヴは、すっかり俺の部屋に居着いている。

 おまけに、テーブルに向かってこれからの計画書を書いていると、膝の中に入ってきた。


 何とか再現した、ジャガイモの薄切りチップス。

 それをかじりながら、茶を飲んでまったりしていた。


 それなのに、シーヴがやって来て、人の膝の座ると、そんなに時間をおかず、杏がやって来る。

 人の膝に座ったシーヴを一瞥する。

 特に文句も何も言わない。


 ただ、満足をするまで、俺にキスをし始める。


 高校二年とはいえ、実際は二十歳を越えている。

 そのため、発情期なのと宣言された。


「人間にあるのか?」

 そう聞いたら、「私にはあるの」。

 そう言い切られた。


 変異したせいか?


 そうそう、じいちゃんが言うまま。俺達うかつに人類として、一歩上に上がってしまったが、「寿命が確か長いぞ」。

 そんな事を、後出しで言われた。


「若いままじゃから言いじゃろ。わしは、このままで何年延びたのか……」

 そう言って、悲しそうな顔をしていたが、秘薬作製のアイテムを探しているのを知っている。じいちゃん若返るつもりだ。

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