第12話 魔導具による、復興。
「これが、水系統の魔導具。何処にでも付けられ、手をかざせば水が出ます。そして、魔導コンロ。魔導冷蔵庫。魔導エアコン。そして今、光希様と共に、発電の魔導具を開発中です」
真ん中に六つほど集められた机。
その上に、魔導具が並べられていく。
見た目は、真鍮に石が埋められ、緻密な文様と文字が書かれたもの。用途により形は様々だが、基本は同じ。
「ほほう。これが魔導具。材料は真鍮かね」
「そうですにゃ。これを船の機能では、制限があるが順次配布して行くにゃ」
シーヴがそう言うと、日本人側ではなくユーディット達が驚く。
まあ、そうだろうな。
俺はついシーヴの頭をなでる。
するとまあ、全員がこちらに注目だよ……
「えーということで、近所から順に配布しインフラの復旧をして行きたいがよろしいでしょうか? 町長」
「うん? ああ、それは良いがそれの何処で、利益が…… あっいや」
「えっ。町が材料費を負担してくださると。いやありがとうございます」
そう言って、オッサンの手を握り、ぶんぶんと握手をする。
当然、直ぐに手を浄化。
「町の復興のためだし、寄付と言うわけには?」
議員の一人がそんな事を言い始める。
「さっすが、
「いや逆……」
「そうですよね。流通は止まり、食料すらまともに供給されない状態。一般人に資材調達やその金を用意するなんてことは出来ませんもの。さすが、議員をやっている方はご立派です」
そんな事を言ってみる。
すると、町の職員
「では早急に品目の目録と、寄付に対する感謝状を用意。町の会報にもそれを載せましょう」
有無を言わさず詰める。
「それは素晴らしい」
町長までそう言いだし、校長まで。
「その宝石は無理だが、真鍮なら何処にでもありそうだ。戦中の鉄の供出ではないが寄付を募ろう。インフラは重要だしな」
そう。そんな感じで、関わる準備は出来た。
帰り道。
「意外と糾弾をされませんでしたね」
「目に見えず、想像が出来ないからな。情報がないとはそう言うことだ」
じいちゃんが嫌そうな顔をする。
「ただまあ、今のうちに恩を売り、自分たちが必要な者達だと認識させろ。魔導具は直ぐには模倣は出来まい。刻む陣は積層にしておけよ」
「分かりました。でも実際、材料はどうしましょう?」
「ダンジョンで創る。心配をするな。それと、初期に造るものは一年から五年くらいで壊れるようにセットしておけ」
「それはどうして?」
「人はそれがあるのが普通になると、無くなるのに恐怖を覚える。ファジェーエヴァの技術が必要だと思わせる」
「なるほど」
そんな悪巧みをしながら家に帰る。
「畜生。うやむやのうちに、寄付をすることになってしまった」
「あの小僧、目端が利く。町長は自分の方に来ないので諸手を挙げていたし、一工事数千万が浮くので万々歳だろう」
「それと、職員のあいつだ。油断成らん。何が直ぐに書類を作成しますだ。普段言っても動かんくせに」
議員さんは、何か思惑が外れたようだ。
「財政的に、復旧がストップしていましたが、一気に解決ですね」
「それは良いが、燃料問題もある」
「役場の車は、EVですし、バッテリーを外して魔導具にすれば良いのでしょう? 一気に電化すれば、化石と違い。輸入に依存しなくて済みます」
「おお? そうか。施策のそう案を作ってくれ。要望として、彼……」
「神谷 息吹君ですか?」
「そうそう。彼に渡そう。随分仲が良さそうだった。何とかしてくれるだろう」
「そうですね」
「へえ。そんな事になったの?」
「ああ」
家に帰ると、なぜか杏が戻ってきていた。
着替えをもって…… まあ目的は風呂か。
「明日にでも、おまえん家に魔導具を付けてやる」
「えー。あっうん。ありがとう」
そう口では礼を言うが、表情はつまらなそう。
そして、人のベッドに転がる。
「明日はまだ学校があるぞ」
「いいの。行きに荷物だけ持っていくから。その、泊まる。恋人だし良いでしょ」
「今までだって、泊まっていただろ」
「いいの。細かなことは気にするな」
「まあ良いけど」
そうして寝るが、杏から手が伸びてきては、ビクッとして戻っていく。
何してんだコイツ?
目を開くと、すぐ横に顔があり真顔で俺を見ていた。
なんか怖い。
「どうした、眠れないのか?」
「えっ。べっ、べつに」
腕枕をする様にして、抱きしめてみる。
いきなり体温が上がっていき、呼吸がレッドゾーンに飛び込む。
なんだか、シュゴーシュゴーと聞こえる。
「おい、大丈夫か?」
「えっうん。大丈夫」
結局、杏は一人興奮して一晩を過ごす。
息吹ってば、異性に興味が無いの? どうして人の横であんなに安眠できるのよ。
そう彼女は、暴走する種としての本能。それを抑えるのに苦労していた。
体が強化され、種としての能力は常時限界突破。
好きだと認識をすると、もっと触れ合いたい。
そうもっと生々しく。そんな思いの影に、シーヴへの焼き餅があることに気が付いていない。
シーヴより先に、もっと深く仲良くなり、繋がりを強くしたい。
そんな乙女心が、暴走していた。
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