インターハイ2回戦-白岡高校-2
翌日、白岡高校との対戦の日。
まずいな、朝から緊張しているな。
俺は深呼吸をした。
平常心だ、平常心。
駅で待ち合わせして、全員で総合体育館に向かう予定だ。
緊張からか、1時間も早く来てしまい、ウロウロと歩き回っていた。
全く落ち着いてないな、俺。
平常心だ、樹!
心の中で何度も言い聞かせた。
主語が俺ではなく、君、あなた、自分の名前にしたほうが客観的に見ることができると聞いたことがある。
また、そのほうが平常心を保てるらしい。
そのため、自分の名前を呼んで、平常心を取り戻そうとした。
今日は自分でも信じられないほど、緊張している。
きっと、過去イチだ。
自分でも緊張しがちなのは、自覚している。対策もしているけれど、その日、その日で違ってくる。だから、対策をしても緊張を完全になくすことはできない。
落ち着かず、動き回っていると、聞き覚えのある声がする。
「今日は相当緊張しているんだね。全く緊張しいだな」
「美香?」
俺が振り返ると、そこには美香がいた。
「もう、やるしかないんだから、覚悟を決めなさい。覚悟が決まったら、緊張なんて忘れるよ」
美香は笑顔で答えると、背中をバシバシ叩く。
「美香っ、いてぇよ」
俺はそう言いつつも、美香の言葉に緊張の糸が切れたような気がした。
そうだ、もうやるしかないんだ。
この緊張は良いパフォーマンスをするために、必要な緊張だ。思いっきり、楽しんでやろう。そんな気持ちになった。
「やっぱり、美香には見抜かれるな」
俺は苦笑いした。
「どれだけ一緒にいると思ってるの。当然でしょ」
美香はコツッと俺の額を叩く。
「……」
俺は何も言えなかった。
女の子ってやっぱり鋭いのかな。俺、ずっと一緒にいても、美香のこと見抜けない気がする。
美香とやりとりしていると、徐々にメンバーが揃ってきた。
「おはよう」
慧の声がした。
「おはよ」
慧もすぐに俺の緊張に気づいたらしい。
「そうとう、緊張してるな」
慧にも気づかれたか。
でも、いつものことだから、あまり気にしないほうがいいな。
よし! 今日も楽しんでやるぞ。
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