インターハイ開幕17

 そろそろ、スリーポイントを阻止してくるだろうと考えていた俺は、既に次のプレーを考えていた。


 とりあえず、今はディフェンス。狙えれば、ボールを奪う。つまり、スティールだ。


 市村から吉村、吉村から野崎、野崎からジェームズ、ジェームズから立川とパスを繋いで、城伯高校を翻弄した。


 シュートする素振り、ドリブルをする素振りを見せて、速いパスで回していく。


 最終的に立川にボールが渡ると、両手でリングに叩きつけ、ダンクをする。


 そこに慧が手を伸ばす。


 ボールを叩いてブロック。


 だが、慧はブロックしたとき、立川に体当たりする形になってしまった。


 その瞬間、笛が鳴る。


 慧のファウルだ。これで慧は4ファウル。


 あと、ひとつファウルをもらったら、ファウルアウト。退場となってしまう。


 慧は、立川の体を起こすために手を引っ張った。


「ごめん」


 慧は何度もその場で謝った。


 怪我をしていないようだから、少しホッとした表情だ。


「気にするな、それだけ良いディフェンスしてるってことだよ」


 立川は助けてもらったお礼として、肩をポンポンと叩いて合図した。


 ファウルになるのは、ある程度仕方がない。それだけ、粘り強いディフェンスをしているということにもなる。


 立川には、フリースロー2本が与えられる。そのタイミングで、高宮コーチはメンバーチェンジを要求した。


 慧に代わり、快がコートの中へ。


 慧は4ファウルなので、コートには出しづらくなってくる。


 ラストなら良いのだが、まだ、3クォーター。4クォーターも残っている。この状況なので、基本的には、いざという時しかコートの中には入れない。


 高宮コーチは、立川が1本目のフリースローをしている間に、俺を呼ぶ。


「樹、セットプレーになったら、もっとスクリーン使え」


「はい」


 セットプレーは、型が決まっているプレー。そのときにスクリーンを使うことで、スペースが空けて、攻撃しやすいようにする。


ボールを持っていない選手、オフボールの選手がボールを持っている選手のディフェンスを抑え、壁を作って一時的に動きを封じる。これがスクリーン。


 これをもっとやって、オフボールの選手が、ボールを持っている選手を自由にプレーできるようにする。


 高宮コーチは、そういうことを言いたいのだと理解した。


 俺もそう考えていた。そして、外、中、外、中とパスを繰り出し、チャンスがあれば、シュート。


 外はスリーポイントラインよりも外側、中はペナントエリア、台形の中のことを指す。


 ただし、ペナントエリアはオフボールの選手が3秒以上いたら、反則なのでいかに素早く開くかがポイントだ。


 俺は一度、頭をクリアにするため深呼吸をした。ちょうど、そのとき、立川の1本目のフリースローが外れた。


 立川のフリースロー2本目。


 2本目は外したときにリバウンドがとれるように、しっかりとポジションにつく。


 立川の2本目のフリースロー。


 ゆっくりとした動作で、軽くボールをつき、シュートを放つ。


 ボールはリングの周りをぐるぐる回った。


 そのボールはリングを3周したあと、リングの中へ滑り落ちた。


 2本目のフリースローは成功。


 城伯高校のオフェンスだ。


 俺は、快にフリースローラインまで来いと指で合図する。その後で、灯にスクリーンをかけにいけと目で訴える。


 灯が快をマークしている立川にスクリーンをかければ、壁ができる。一時的に立川のディフェンスを止められる。



 すると、快が今までいた場所が空く。そこに、俺はドリブルで、ゴール下まで切り込むドライブをする。


 ノーマークでシュートができる。ただ、スムーズにはいかないことも考えている。


 俺は、ボールをリングに置いてくるようにシュートしようとしたとき。


 市村のシュートブロック。


 ボールをバシッと叩いた瞬間、俺の目に腕が直撃し、バランスが崩れ、倒れる。


「樹先輩!大丈夫ですか?」


 快がすぐに駆け寄ってきた。


 俺はすぐに立ち上がるものの、目に当たったため、しばらく目が開けられなかった。


「悪かった。大丈夫か?」


 市村も声をかけてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る