インターハイ開幕16

 俺から灯へのパスが、吉村にスティールされた。


 吉村は、市村へとパス。市村はジャンプシュートを決めた。


 すぐに俺はオフェンスへと切り替えて、市村が何もできないように、壁を作った。


 市村は1対1を仕掛けようと、ドリブルで俺を抜くというスタイルをした。


 でも、これはフェイク。フリースローラインに入っていくのではなく、下がった。


 スリーポイントラインよりも、やや遠い。


 1対1だと思った俺は、遅れた。


 市村はスリーポイントラインより、やや遠いところから、シュートを放つ。


 ディープスリーだ。


 俺が戻ってきた時には、もう、市村の手からボールが離れていた。


 市村のディープスリーは、見事にリングの中へ。


 俺は市村の動きが見抜けなくて、悔しかった。


 市村は、仕返しと言わんばかりに、俺を横目で見て、不敵に笑う。


「面白い」


 俺はフッと笑みが溢れて、つい、口にした。


 市村に乗ってみるか。バスケってこんなに面白かったっけ?


 ずっとバスケをやってきたけど、こんなにワクワクしたのは初めてだ。


 城伯高校のオフェンス。


 俺はボールを一度持ったが、すぐに慧に渡していた。


 慧はドリブルから自分で、シュートを決めに行くとアピールした。


 立川もその気になって、シュートを決めるだろうと予測していた。


 だから、シュートをする動作の時に、手を出していく。シュートブロックを狙ってだ。


 ところが、それはフェイク。


 シュート体制に入っているし、既に慧は空中にいるにも関わらず、瞬時に判断した。


 灯にパスをする。


 空中でシュートからバスへ切り替えるとは、立川も思っていなかったようだ。


 灯はボールをもらうと、慧に手で合図する。


 灯の合図で、慧はスリーポイントラインまで走る。コーナーまで来ると、慧はノーマークになっていた。


 灯はそこを狙って、慧にパス。


 慧はすかさず、スリーポイントを放つ。コーナーからのスリーポイントは難しい。


 それでも、慧のシュート動作は軽やかだった。無駄な力が抜けていて、ふわっと浮かせる感じだ。


 そのシュートはシュッと音を立てて綺麗に決まった。


「センターもスリーポイントを打つ。このチームはオールマイティーだな」


 立川は目をぱちくりさせていた。


「あのポイントガードだけじゃない。誰でもスリーポイントを打ってくる。スリーポイントを阻止しよう」


 市村が三ツ谷高校のメンバーに声をかけた。


「そうだな。これ以上、スリーポイントをさせないようにするぞ」


 立川が頷いた。


 俺は俺で、スリーポイントをやり過ぎているから、そろそろ止めに入るから、打てなくなるだろうと予測していた。


 そのことを城伯高校のメンバーに伝えていた。


 スリーポイントを止められたとしたら、次にやるプレーは。


 俺の中では、既に頭の中に浮かんでいる。

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