インターハイ開幕18

 俺は、ボールをリングに置いてくるレインアップシュートをするとき、市村のシュートブロックをされた。


 そのときに腕が目に直撃し、目が開けられないでいた。


 快と市村が大丈夫かと声をかけてくれたが、思ったよりも衝撃が強かった。


 試合は中断。


 審判も駆けつけ、様子を見守った。


 そんなに時間は経ってないと思うが、偉く長く感じた。


 数分後、ようやく目が開けるようになり、きちんと視界も大丈夫なことを確認した。


「大丈夫だ」


 俺は市村と快に向けて、遅い返事をした。そして、審判にも大丈夫と告げた。


 当然、市村はファウル。俺は、フリースローが2本与えられる。


 俺はフーッとゆっくりと息を吐く。


 フリースローは何よりも緊張する。


「樹、リラックスしていけ。落ち着けば大丈夫」


 慧がベンチから声をかける。


 俺は頷いて、もう一度、息を吐く。


 そして、何度かボールをついて、また深呼吸。


 ゆっくりとボールを構え、柔らかく膝を使ってボールを放つ。


 フリースローは特に膝が大事で、腕の力はいらない。


 腕は力を抜き、手首にスナップを利かせるだけ。膝を曲げ、力を溜め、膝を伸ばすと同時にボールを放つ。


 そのボールは綺麗にリングの中を通過する。


 貴とハイタッチをすると、すぐに2本目のフリースローの準備をする。また、深呼吸。1本目が入って、気持ちも楽になるけれど、それでも緊張する。


 1本目と同じルーティンで、フリースローを放つ。


 2本目は外した。ボールがリングに弾かれてしまった。


 弾かれたボールを取ったのは、吉村だ。吉村はドリブルしながら、指で合図する。立川に指示をしたようだ。


 立川はゴール下に向かって走り出す。


 必ず間に合って、ボールを受け取ってくれると信じて、吉村はロングパスを出す。


 立川は吉村の期待に応えた。


 ボールを受け取って、そのまま、片手でリングに叩きつけた。


 ワンハンドダンクシュート。


 俺たち、城伯は阻止することが間に合わなかった。


 でも、反省している暇はない。すぐにオフェンスに切り替える。


 俺は智樹にパスをする。


 スリーポイントを打とうと思えば打てるが、ここは吉村がマークについているため、無理に打たなくても良い。


 智樹は貴にパスを出す。


 貴はすぐに灯に出した。


 灯はスーッと、ドリブルで切り込んでいった。スムーズなドライブだ。


 灯についていた野崎が抜かれて、立川がフォローに入った。


 立川が灯についていたが、灯にはそんなこと関係なかった。立川をも抜き、ボールをそっとリングに置いてきた。レインアップシュート。


 灯はあっさりとシュートを決めた。


 あまりにあっさりとしていたので、立川は何があったのか、すぐには状況を把握できなかった。


 また、俺たち、城伯も何があったんだ? と、顔を見合わせた。


 何食わぬ顔で、灯はディフェンスへと戻る。


 灯自身が入れたのに、入れてないよという表情をしていた。

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