インターハイ開幕14

 立川にシュートを決められ、城伯高校のオフェンス。


 今のプレーは、もう終わったことだから仕方ない。いつまでも、引きずっていると、この後にも影響する。


 俺は慧にパスを出すと、そのまま、ゴール下の方へ走り込む。


 慧からパスを受け取ろうとしたが、ここはスルー。つまり、俺は囮だ。


 慧は自ら、ジャンプシュートをしようとした。   


 そこに立川という壁が立ちはだかっている。


 身長差のミスマッチ。


 慧は180cmに対して、立川は198cmもある。このミスマッチをどうやって打破するか。


「慧!」


 灯が声をかけた。その瞬間、慧は灯が走ってくると信じて、灯を見ずにパスを出す。


 ノールックパス。


 見事に灯が走ってきて、ボールを受け取る。そのまま、リングにボールを置いてくるレインアップシュートもできた。


 だけど、野崎に読まれる可能性がある。裏の裏を読み、灯は慧へとパスを戻す。


 慧はスリーポイントが打てる位置。また、慧のマークについている立川が、ボールの方に集中している。


 完全に慧はノーマークだ。ここは迷うことはない。打てるチャンスがあれば、スリーポイントも打つ。


 立川が慧のマークにつけない。


 ジェームズはすぐにその状況に気づいて、慧を抑えにくる。


 でも、慧のほうが早かった。ジェームズが来た時には、既にスリーポイントを放っていた。


 慧のスリーポイントも成功。


「よし!」


 これには、今まで黙って見ていた高宮コーチもガッツポーズをした。


 67-65


 とうとう城伯高校が逆転した。ただし、まだ2点差。最後まで何があるかわからないのがバスケだ。


「誰でもスリーポイントできる……か」


 ジェームズは、まだ、慣れていない日本語で、ボソッと呟く。


 その言葉から、とても悔しそうな気持ちが伝わってくる。


「ここ、1本行くぞ」


 市村がドリブルしながら、人差し指を立てる。仲間の気持ちを切り替えさせようとしていた。


 今の流れは城伯高校にきている。この流れを断ち切らなければと、まずは声をかけてもう一度、集中させる。


「ここ抑えるぞ!」


 慧の声に松柏高校のメンバーは頷いた。


「フォローもしっかり頼む!」


 俺はディフェンスで抜かれても、しっかりとフォローができる体制も作りながら、ディフェンスにつく。


 市村はどういうプレーを選択するか。


 市村が選んだのは、俺との1対1。


 俺は抜かれないように、市村のスピードについていく。


 本当はゴール下まで行きたかったところだろう。


 俺はゴール下まで、市村を行かせないようにディフェンスをする。


 市村はドリブルに変化をつける。ゆっくりから急に早くした。


 これで抜けると予想したようだ。


 これはチャンス。


 俺はボールを奪った。スティールだ。


 このまま、ドリブルしてリングにボールを置いてくる、レインアップシュート。


 このシュートは……?

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