久しぶりのオフ7

 俺、美香、慧、貴、灯の5人で病院に来ていた。


 達也のお見舞いだ。


 手術は終わったと言っていたが、ここからが大変だとも聞く。


 手術後、すぐに退院できるわけではなく、まずは安静。


 その後、リハビリ。


 リハビリにも時間がかかる。


「お見舞いありがとな。そして、インターハイ出場おめでとう!」


 達也は笑顔で答えた。


 本当は、達也本人が1番辛いはず。試合にも出られなかった。


 完全に復活するまで1年かかる。


 そうなると、高校でのバスケは、もうできないということになる。


 それでも、達也は明るく振る舞っていた。


「俺、また、必ずバスケ復帰するし。高校ではできないかもしれないけどさ」


 達也はニヤッと笑って見せる。


「いや、いい機会だぜ。できない分、動きの研究はたくさんできるからな」


「随分、前向きだな」


 慧は達也の表情に驚いているようだった。


 確かに思ったよりも達也は前向きだ。


「まぁ、最初はもうバスケできないのかって、諦めかけてたけどさ」


 達也はサラッと言う。


 本当は落ち込んでいるのかもしれないし、開き直ったのかもしれない。


 本人にしかわからないから、なんとも言えない。


「でも、その分、バスケと向き合う時間はできる」


 達也は、NBAの動画を見せた。


「NBAの動画」


 貴は達也と一緒にスマホを覗き込む。


「NBAの選手の動きを勉強してるんだ」


 達也の顔は満足そうだ。


 今はバスケができないとわかったら、動画で動きを確認してイメージトレーニングをしている達也。


 確かにイメージトレーニングはできるよな。メンタルトレーニングをするとき、ずっとやっているトレーニング。


 高宮コーチやメンタルトレーナーに教えてもらったイメージトレーニング、病院でも欠かさずにやっているんだ。すげぇな。


「樹のお兄ちゃんもNBAで試合するんだな。これから」


 NBAの動画を見ていた灯が呟く。


「確かにね。でも、比較しないでね。樹は樹のプレーをすればいいんだから」


 美香にフォローされた。でも、それだけ心配してくれてるんだな。ありがとう。


 と、言いたいところなんだけど、照れてしまって言えない。


 だから、空返事みたいな感じになってしまった。


「お、おう……」


 慧は俺をじっと見て一言。


「素直じゃないな」


 慧のその一言に、灯、貴、達也も吹き出した。


「どうしたの?」


 全くこの状況がどういうことか、理解できていない美香はキョトンとしている。


「えっ? まさか、美香ちゃんも気づいてないのか?」


 達也が美香を見て、目を見開いていた。


「えっ? 何? おかしなこと言った?」


 美香は首を傾げている。


「あぁ、こういうことには疎いのか」


 貴は何故か頭を抱えている。


「まぁ、とにかく、俺、ここから、また頑張って這い上がるから。インターハイ優勝目指して頑張れ!」


 達也は綺麗にまとめて俺たちを鼓舞した。


「おぉ! 皆で勝ち取るんだ!」


 俺たちは手を出して重ねて、気合を入れる。


「全員バスケでインターハイ優勝だー!」


 病院なので控えめだったが、これで、気合いが入った。


 さぁ、行こう! インターハイ!!

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