久しぶりのオフ6

 デートの翌日、学校に行くと、真っ先に灯が声をかけてくる。


「美香ちゃんとのデートどうだった?」


「えっ、あぁ……」


 俺は何も言えなかった。


 なんだか恥ずかしい。


 戸惑っている俺の背後から、慧、貴もやってきた。


「何? 何? デート?」


 やけに食いつく貴。


「うるせーな、もう」


 俺はその話題を切りたかった。


 恥ずかしすぎる。


「照れてるのかぁ」


 慧がクスクスと笑っている。


「慧まで!」


 俺は、ここまでデートのことでイジられるとは、思ってもいなかった。


「そうそう、一度、達也のお見舞い行こうぜ」


 灯がようやく話題を変えた。


 俺はちょっとホッとした。


 ずっとデートの話題を振られていたら、それこそ、ドキドキ感が増してしまう。


 今でも動揺して鼓動が速くなっているのに。


「美香ちゃんにも声かけてね。樹」


「お、俺?」


 慧に言われて、俺は何故か焦ってしまった。


「慧が言えば言いだろうに」


 俺は抗議するが、慧はニヤニヤしている。


「だって、美香ちゃんと仲がいいのは、樹だし、お二人の仲を邪魔しちゃ悪いしな」


 慧は何を言っているんだ。


「待て、待て、俺、美香と付き合ってねぇって」


 俺は補足するが、慧だけでなく灯と貴もニヤッとしている。


「気が付いていないのは、2人だけか」


 と言ったのは、貴。


「えっ? それどういう意味?」


 俺は質問するが、その質問には答えない。


「まぁ、そのうち、気づくだろう」


 灯はそう言って、手を振る。


 灯と貴はクラスが違うため、授業中はバラバラだ。


 灯と貴はそれぞれのクラスへと向かった。


 俺と慧、美香は同じクラスなので、バスケの連絡などやりやすい。


 教室に入ると、美香が来ていた。


「おはよう、樹」


「お、おう……」


 美香に挨拶され、俺は素直におはようと言えずに空返事になってしまった。


 俺は深呼吸をして落ち着けてから、美香に達也のお見舞いに行くことを話す。


「そうだね、お見舞い行こう」


 美香はにっこりと笑った。


 美香の笑顔に、俺はドキッとしてしまう。


 これはどういうことだろう。


 美香は不思議そうに俺を見てくる。


 じーっと見られては、余計にドキドキする。


 俺は美香と目を合わせることができなかった。


「何、恥ずかしがってるの?」


 美香は、そんな俺の気持ちを理解しているのか、していないのか、何か疑うような目で見てくる。


「ってか、そんなにジロジロ見るなって」


 俺は、わざと窓を見た。


 顔が熱い。今見られたらまずい。


 ちょうどその時、チャイムがなる。


「授業が始まる。樹、ちゃんと勉強しなよ?」


 美香に言われて、俺は教科書を取り出しながら、手を振る。


 今は、授業の時間になって良かった。


 それにしてもこのドキドキ感はなんだろう。

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