久しぶりのオフ5

 俺は美香とスポーツショップに来た。


 美香が、俺のバスケットシューズ、通称、バッシュがボロボロになっていることを知って、バッシュをプレゼントさせてと言ってきた。


 最初はプレゼントの意味が分からなかったが、誕生日プレゼントだと美香に言われて、初めて、俺は自身の誕生日だということに気がついた。


 美香は、俺が自分の誕生日を覚えていないことに呆れていたけど。


「……いいのか? バッシュは高いぞ」


 俺は遠慮がちになっていた。


 バッシュの値段も馬鹿にならない。


 高いものだと30000円もする。


 かつて、マイケルジョーダンという選手がNBAで大活躍した。バスケだけでなく野球もやっていたことから、スポーツの神様とまで言われるほどの人気を誇り、ジョーダンブランドが誕生した。


 ジョーダンブランドは、バスケ界では有名。スポーツウェアやリュック、帽子など、現在ではバスケ以外の競技であるアスリートも愛用するほど。


 ジョーダンブランドのバッシュは、高級なものなら40000円近い値段だ。ただ、バスケをしている以上、ジョーダンブランドのバッシュは、憧れだ。


 見てしまったら、欲しくなってしまう。


 俺はジョーダンブランドを見て、思わず手を伸ばしそうになったが、値段を見て引っ込めた。


「ジョーダンブランドでも、少し安めのバッシュがあれば……」


 俺はじっくりとバッシュを見てしまう。


「まぁ、誕生日プレゼントだから、少しくらい高くても大丈夫だよ」


 美香は迷っている俺に、声をかけた。


「でも……いくらなんでも」


 美香が誕生日にプレゼントしてくれることは嬉しいが、バッシュは流石に高すぎる。


「大丈夫だから。ねぇ、これ、かっこいいじゃん」


 美香が、展示してあるジョーダンブランドのバッシュを指した。


 それは黒と赤の混ざったバッシュ。踵の部分にはジョーダンブランドのロゴがついている。


 俺は、美香からバッシュを渡され、まじまじと見た。


 確かにかっこいい。かっこいいけど、値段が。


 30000円は超えてしまう。


「でも、これ……」


 俺はどうしても踏み切れなかった。高校生にとっては、30000円は大きい。こんな高いものを買わせるわけには。


 このバッシュはかっこよくて、確かに欲しい。でも、値段のことを考えたら、とても、欲しいとは言えない。


 迷っているところに店長さんらしき人がやってきた。


 女性店長だ。美人で綺麗なお姉さん。スラッとした細身の体型で、背が高い。185㎝はありそうだ。俺よりも高い。


「それ、かっこいいよね。もう、在庫があまりないの。買うなら早いほうがいいよ。今度の入荷がいつになるかわからないからね」


 優しく声をかけてくれた女性店長。


「そんなに人気なんですか?」


 美香が問う。


 女性店長は首を縦に振った。


「そうなのよ、入荷した途端にすぐ売れちゃうの」


 女性店長は何かを思い出したらしい。


「そうそう、今、セールしているの。夏の部活応援キャンペーンで、全商品30%引きだよ」


 俺と美香は驚いた。


 30%引きってことは、えっと、勉強していないことが仇になった。計算できない。スマホで調べようとしたとき、美香はあっさりと答えた。


「21000円になる。これはお買い得じゃん。これにしなよ、樹」


 ほとんど、美香が選んで美香が決定しているような気がするが、俺もこのバッシュにひと目惚れしたから、このバッシュに決めた。


「でも、本当にいいのか?」


 美香に確認をする。


「いいよ、気にしないでよ。誕生日プレゼントなんだから」


 美香は笑顔を返した。


 その笑顔にドキッとしてしまったのは何故だろう。


 会計が終わり、スポーツショップを出た。


「ありがとな、美香」


 俺はスポーツショップを出た後、ご飯を食べることにした。

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