久しぶりのオフ3

 兄ちゃんがNBAでプレーすることが正式に決まった翌日、学校に来るとバスケ部のメンバーが祝福してくれた。


「兄ちゃん、とうとう、NBAに行くことになったんだな。おめでとう」


 真っ先に慧が声をかけてくれた。


「ありがとう」


 俺はお礼を言うと、貴や灯も兄ちゃんのNBA入りを祝う。


「やっぱり、NBAは夢だよなぁ。俺もNBAでプレーしてみたいな」


 貴はエアーでシュートして見せた。


「そうだなぁ、なかなか厳しい世界だとは思うけど」


 俺もNBAに行きたいと思っているが、今の段階では、全然、NBAでプレーすることがイメージできていない。また、今のプレーでは、NBAからも注目されない。本当に厳しい世界だと思っているから、本音が出た。


「あまりプレッシャーになるなよ。また、いろいろと言われるだろうからさ」


 灯は俺の肩を叩く。心配してくれているのか。


「そういえば、美香ちゃんとデートするんだって?」


 慧はガシッと肩を組んだ。


「えっ……? デートって……」


 何故か戸惑う俺。


「あれ……? 照れてるのか?」


 貴がニヤニヤしている。


「別に照れてねぇよ」


 俺は貴を睨みつけた。


 そんな会話をしながら、今日も1日過ごす。


 意外と1週間休みは長いな。早くバスケがしたい。


 俺は帰宅途中で、バスケットゴールのある公園で足を止めた。イメージをしながら、ゴールを見つめる。


 やっぱりやりたいなぁ。早く1週間経たないかなぁ。


「何、黄昏れてるの?」


 美香が俺の背後から背中を押しながらやってきた。


「おい、美香、何してんだよ」


 俺は振り返った。


「約束覚えてる?」


 美香はにっこりと笑う。


「約束?」


 俺は首を傾げる。


「もう、デートの約束だよ!」


 美香は腕を組んできた。


「あぁ、そうか」


 俺は美香に腕を組まれて、恥ずかしくなった。


「忘れてたな、これは」


 美香は俺の頬を小突いた。


「忘れてないって」


 美香の指が頬に触れただけで、俺はドキドキした。


「ってか、平気でくっついてくるけど、恥ずかしくないのか?」


 俺は喜んでいる美香を見て驚く。


「別に。それにしても……」


 美香はひと呼吸してから続ける。


「プレッシャーになってない? お兄さんがNBA入りして、また、比較され始めているからさ」


 俺は目を丸くした。


 美香も心配してくれていたのか。


「あぁ……まぁ、プレッシャーはないと言ったら噓になるけれど、俺は俺だからな。俺のプレーする」


 俺は美香に感謝した。


「ありがとう」


 俺の声は、ちょっと小さくなっていいたようで、美香には聞こえなかったようだ。


「えっ? なんて言ったの?」


 美香は聞き返してきたが、恥ずかしくなって俺は素直に言わなかった。


「なんでもねぇよ」


「じゃあ、約束忘れないでね」


 美香はそう言うと、手を振って去っていく。


「お……おう……」


 俺は美香に手を振り返す。


 なんで、こんなドキドキしてるんだ。俺は。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る