2部-4幕 久しぶりのオフ

久しぶりのオフ

 インターハイ出場をかけて、埼玉県大会が行われ、全日程が終了した。城伯高校は埼玉県大会で優勝し、インターハイ出場が決定した。


 8月中旬からインターハイが始まる。今度はインターハイに向けて練習をする。


 気合が入るなぁ。


 ただ、ひと段落ついたので、練習をオフにしようと、高宮コーチが提案したため、1週間、練習がお休みになった。


 休むことも大事だと。普段、練習や試合で筋肉を酷使している分、筋肉を休ませる目的もある。酷使し続けると、もし、バスケを続けるなら、ケガが多くなり、ケガがきっかけで続けられない場合もある。


 そんなことも考えて俺たちの体のことも考えてくれている。また、バスケのことばかりになると、行き詰って負のループに入りやすい。そうならないために、リフレッシュしていくことも大切だと高宮コーチは教えてくれた。


 だけど、いざ、休みになると何したらいいか、わからない。


 ベッドの上でゴロゴロして、パソコンやスマホでYouTubeを見るしかない。それも、結局、バスケ。


 学校はあるけれど、勉強する気は全くない。


 部活がないと、家に帰るのは早いから、時間を持て余してしまう。


「樹! 部活は休みでも勉強の休みはないよ。ちゃんと勉強しなさーい!」


 母さんの声がする。


「やってるよー!」


 本当は勉強なんてしていないのに、嘘をついた。


 勉強なんかやってられるかー!


 そんなことを考えていたら、タイミングが良いのか、悪いのか。


 美香から電話がかかってくる。


 俺の勘が正しければ、嫌な予感がする。


 美香の電話に出ないで切ろうとしたら、思わず、出てしまった。


 美香の第一声。


「樹、やっぱり勉強してないんでしょ? また、バスケできなくなったらどうするの?」


 あぁ、またお説教だ。


「また、私が勉強教えに行こうか?」


 電話越しに聞こえる美香の声は、俺を叱っているのか、わからない。楽しそうな声にも聞こえる。


「わかったよ、ちゃんと勉強するよ」


 と、口では言っておく。


「本当にバスケしか頭にないんだから。でも、たまにはバスケから離れないと、バスケでも追い込まれるよ」


 美香はため息をついた。


「俺にはバスケしかないからさ」


 俺の声を聞いて、美香はフッと笑っている。


「よし、今度の土曜日、デートしよう」


 いきなりのことに俺は、一瞬、体が動かなかった。


「で、デート!?」


 明らかに動揺している。


 なんでだ? 別に俺は美香のことをなんとも思ってないぞ。


「たまにはリフレッシュしないとね」


 美香はニヤニヤしている。電話越しでもわかるぞ。


 美香の思惑は何か。


 何か企んでいるな。でも、まあ、気晴らしになるか。


 俺は美香の誘いを承諾した。


 美香と何処で待ち合わせするのか、時間はどうするのか決めて、電話を切った。


 デート……


 なんで、こんなにドキドキしているんだ?


 意味がわからねぇ。


 急にデートと言われて、頭が一気に混乱し始めた。


 だけど、デートのことなど吹っ飛んでしまうくらい衝撃的な出来事が起こった。


「樹! ちょっと来て! 早く! ニュース! ニュース!!」


 母さんの興奮した声に、俺は大慌てでリビングにやってきた。

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