インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー20

 智樹のシュートは、これだけでは終わらなかった。再び城伯高校にチャンスがやってきた。


 智樹がフリーになったところを見逃さなかった貴は、すぐさまパスを出すと、迷わずシュートを放つ。


 智樹の3ポイントシュート。これが、見事にリングに吸い込まれる。このシュッという音が聞こえると、気持ちがいい。


「また、やられた……」


 安見は徳丸高校のメンバーに、智樹に3ポイントを打たせないように指示した。


 ところが、智樹は3ポイントがダメならと、ゴール下へと切り込んでいく。


「今度はドライブか!」


 矢野は急いで、智樹を止めに行こうとしたが、すでに遅し。レインアップシュートでまた決めた。


 綺麗にボールをリングに置いてくるようにして、放ったそのシュートは、これまた、シュッと綺麗な音を立てた。


 さらに貴のリバウンドで、また、俺たちはチャンスを作った。


 横野が豪快なダンクを決めようとしたが、それが外れた。そこにすかさず、貴が飛び込んできてリバウンドをとった。


 貴は慧にパスをする。


 慧はすでにゴール下にいて、パスをもらうと豪快に両手でボールをリングに叩きつけた。


「おぉー!ダンク!」


 美香は記録をとりながら、ダンクを決めた慧に拍手を送った。


 慧はしばらくリングにぶら下がったままの状態だった。


 慧も完全にイップスを乗り越えて復活したな。


 俺も、もっとシュートを決めたい。アシストも大事だけど、俺だって、できる。できるはずなんだ。皆が調子が出てきたのに、俺だけは、調子が出ていない。凄く悔しい。だけど、焦っても調子は良くならない。ここは我慢だ。


 まずはディフェンス。俺は本山についてプレッシャーをかけにいく。そのプレッシャーが効いたのか、本山は澤本にバスを出すが、貴がカットし、ボールを奪った。


「走れ!」


 貴は指で合図する。


 その合図で一斉に走り出す城伯高校チーム。


 貴はチラッと俺を見ている。何か目で訴えている。これは、俺に打てと言っているのか。


 俺は首を縦に振って合図すると、貴からパスをもらった。


 俺はボールをキャッチすると、1、2、3のリズムでジャンプし、レインアップシュートを決めようとした。


 でも、澤本がシュートをブロックしようとしている。


 まだ、澤本からは距離がある。俺はレインアップシュートから、フックシュートに変えた。ゴールを背に横からシュートをする。手がフックのような形になる。


 シュッと綺麗な音を立てて、リングの中に入っていった。

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