インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー19

 2分間のインターバルで、もう一度、気持ちを入れ直した。


「ここが大事だぞ。リードしていると、安心して油断すしてしまう。もう一度、プレーに集中だ」


 高宮コーチが手をパンパンと叩いた。 きちんと、切り替えができるように。


「今、プレー自体は良くなっている。でも、リバウンドは少ない。リバウンドをとられるのは、ボックスアウトができていない。しっかり壁になってとられないようにするんだ」


 高宮コーチに言われて、俺たちは頷きながら、返事をした。


 高宮コーチは穏やかな声で言っているが、目は闘志を燃やしている。怖ささえも感じさせるほどの。


 高宮コーチは何度もひっくり返される試合を見てきたから、まだだと俺たちに伝えたのかもしれない。


 2分間のインターバルが終わり、泣いても笑っても最後。この10分で決まる。4クォーター開始だ。


 4クォーターのスタートは、俺、慧、智樹、貴、灯。


 徳丸高校は、本山、澤本、横野、矢野、安見が、4クォーターのスタートだ。


 4クォーターの最初のボールは、城伯高校からだ。


 貴がコートにボールを入れる。


 俺はその場でドリブルして、周りを見る。


 智樹が俺のディフェンスについている本山にスクリーンをかけにきた。智樹が壁になり、本山の動きが止まった。


 チャンス! 俺はドライブして一気にゴール下まで切り込んだ。そのまま、リングにボールを置いてくるレインアップシュートでもいいが。


 立ちはだかるのは、明らかに俺と身長差がある横野。


 俺は既にジャンプしていたが、切り替えることはできる。


 ボールを右手から左手に持ち替えて、横野の脇をすり抜けてシュートした。


 ダブルクラッチ! 入った!


 シュートを放った瞬間、俺は得点につながることを確信した。実際、ボールはシュッとリングの中へ。


「よっしやー、走れ!」


 慧がすぐに叫んだ。


 本山がボールを運ぼうとした時、慧は俺が来るまで、本山にプレッシャーをかけ続けた。


 俺が戻ってこようとした時、慧は本山のボールを奪った。


「ナイス、スティール!」


 俺はすぐに走り、ゴール下へと駆け抜ける。


 ここは、慧もノーマーク。そのまま、ドリブルで行き、シュートすることもできる。


 慧はそのまま、ボールをリングに置いてきた。そのボールは見事にリングの中を通過していく。


「ナイシュー!」


 俺と慧はハイタッチした。


 流れが完全に城伯高校に来た。


 流れを徳丸高校に渡すわけにはいかない。


 矢野がボールを持っている。慧と灯でダブルチームを作り、矢野のディフェンスにつく。


 矢野はパスしようと探っているが、パスが出せない。粘り強いディフェンスで、矢野は3歩歩いてしまった。


「トラベリング!」


 バスケはボールをドリブルせず、持ったまま、3歩以上歩いてはならない。


「よし!」


 すぐにオフェンスに切り替え、智樹にパスをする。智樹はスリーポイントの位置を確認し、ゆっくりと膝を曲げ、膝のバネを使って、シュートを放った。


 審判はスリーポイントと指示するため、指を3本立てる。


 シュッと音を立てて、綺麗に決まった。


「よっし!」


 智樹は拳を握って小さくガッツポーズをした。

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